• ジャック・ランシエールへのインタビュを纏めた『平等の方法』を読み始める。きのうまで読んでいた本がヤクザたちの肉声がぱんぱんに詰まった『映画の奈落』だったので(高田宏治らと共に取材のため初めて川内弘と会った奈村協が、「とってもハンサムだし、白髪をオールバックにしてて、なんかフランス文学者みたいな雰囲気でしたね」と述懐しているのもあって)、アルチュセールの1973年の「転回」に対して、かつてアルチュセール自身が齎した「マルクスの理論を権威ある共産党の資産庫から解放し、誰でもそこから結論を引き出してよいようにする」というところから「後退し、否定さえするものだった」と感じ取ったランシエールが、「これは無礼を働かねばなるまい、と思った」なんて云っているのを読むと、すぐに「その人を倒さんと男になれん、それが北陸やくざいうもんでね……わたしはその人を倒いて男になった」を思いだして、まるで、かつて武闘派で鳴らした親分のインタビュを読んでいるような気分になってくる。
  • 仕事から帰ってきて柚子と晩御飯を食べて、パシフィカ弦楽四重奏団ショスタコーヴィチを第一番から三番まで聴いたり、夜中はずっと動画サイトでSKEのPVや、久しぶりに『エビフライデーナイト』(この番組そのものが、SKE48にはどんなグループで、そこにはどんなひとたちがいるのかを探り探りしながらつくられているバラエティだったので、SKEにハマったばかりの私とシンクロしていて、とても好きだった)をみたりしているうちに、いつの間にか窓の外が明るくなってくる。ようやく、地震から二〇年が経ったことを思い出す。あのときも朝方まで起きていて、親友のI君とずっと黒電話で喋っていた。彼と次の日、遊ぶ約束をしていたような気もする。それで、「そろそろ寝ようか」と云って電話を切って、冷たい蒲団に潜り込んでしばらくすると、どーんと揺れた。私はそのときまで全然地震の揺れには鈍感だったので、「お、きょうの地震は俺でも珍しく判るな」と思ったのを覚えている。だからいちおう家の外に出て、屋根瓦が落ちたりしていないかを確かめた。うちで、いちばん被害らしきものがあったのは私の部屋で、本棚が倒れて床一面が本やらLDやらで埋め尽くされた。しかし、たしか一週間ぐらいはそのままで、その上を平気で歩いていた。もういちど、でかい余震がくると、なぜだか固く信じていたからだ。
  • 少し眠る。