《新・幕末純情伝》と《LOVERS》をみる。

  • 先日柚子と演劇の話をしていてつかこうへいの話になり、柚子が、西岡徳馬坂本龍馬をやった《幕末純情伝》が面白かった、玲奈さんならいいんじゃないかと云ったので、慌ててチケットをネットで探して譲って貰ったので、昼から出かけて梅田芸術劇場。つかこうへい七回忌特別公演《新・幕末純情伝》をみる。この舞台の人物の造形やら物語の進み行きは、私の大嫌いな、ドロドロベタベタニヤニヤとした日本のありようそのもので貫かれており、そのぎちぎちの詰め込みぐあいには、笑いがこみあげるほど。沖田総司よ、こんな奴ら片っ端から皆殺しにして踏みつけてやれと思うが、新時代の天子様の隠された姉上であらせられる姫君はけっきょくガトリング砲で蜂の巣にされ、美しいヒロインが悲劇的な死を迎えることで、物語は実にスカッと爽やかに終わる。こういう昇華のさせ方に、反吐が出そうになるが、こういうなりをしているのが本邦の或る側面なのだ。アイドルを卒業したあとの仕事に、この舞台を選んだ松井玲奈の勘の良さにはひたすら感心する。
  • 阪急で四条まで出て京都芸術センターで古橋悌二の《LOVERS》をみる。ときどき、抱きしめるような両腕の動きを示したあと、壁面に投射された裸の人物は、闇の向こうへ倒れこんでゆく。この身ぶりは、「鑑賞者の手前を通るとセンサーが反応して」*1起るものだというのをあとで知ったが、会場の薄暗がりのなかでそれをみていたときの私は、抱きしめる他人なくじぶん自身を抱きしめるほかなくて遂に果てるという像であるというふうにしか思えなかったのだった。