• 本屋で立ち読みした『POPEYE』の現代美術特集で、ゲルハルト・リヒターを語っている或る小説家が、リヒターの作品は現代美術を知らないひとにみせても「かっこいい!」っていうでしょ、みたいなことを云っていて、このひとはいつもダメだが、ほんとうにダメだと思う。そもそも「現代美術を知らないひと」の「知らなさ」とは何であるか、みたいなことをまで文句をつける必要はないが、その杜撰さに乗っかってしまうなら、現代美術を知らないひとがゲルハルト・リヒターを初めてみて放つ言葉は、「やッべ!」である。断じて、「かっこいい!」などという腑抜けた言葉ではない。国立国際美術館で、リヒターの《stripe》の前に佇んでいたキャバ嬢が思わず放った言葉は、それだった。キャバ嬢に初見で「やっべ!」とちいさく叫ばせるリヒターを、だからこそ私は信じている。