日録

ネットで探した近所の造園屋が、朝、見積もりに来る。これが檜葉だというのを初めて知る。 数か月前、路地を挟んだ前の家の婆さんが、延びっぱなしなのが怖いので、短く伐ってほしいと言ってきた。私は、「あなたに何の関係がある」と言った。こうやってご近…

始発の新幹線で上野の東京都美術館まで行ってマティス展を見る。マティスをこれだけ纏めて見るのは初めて。どの時期もどのジャンルも、すごく楽しかった。 御徒町で昼を食べてから清澄白河の東京都現代美術館でデイヴィッド・ホックニー展とコレクション展を…

シネマ神戸でロバート・アルトマンの『雨にぬれた舗道』を見る。大昔の火曜サスペンス劇場みたいな映画だった。娼婦を斡旋するバァのカウンターで何かをぼそぼそ話している(愚痴を聞いているようでもあり、励ましているようでもある)女二人のイメージが、…

シネ・ヌーヴォで渋谷実の『バナナ』をようやく見る。グルメと戦前戦後の日中関係と夫婦とコスモポリタニズムと空手とシャンソンとよろめきとバナナ師たちの映画だった。とても面白かった。一瞬止まって、素早く動き出す岡田茉莉子の挙動の何もかもがキュー…

庭の木を半分ほどの高さに伐ってもらおうと造園の業者に電話をするが、見積もりの日取りは決めずにもやもやと切る。 洗濯物を干して、午後から出かける。福島で降りて梅田まで出て阪急烏丸。京都文化博物館で、鈴木仁篤とロサーナ・トーレスの『TERRA』を見…

昼から出かけて神戸映画資料館で内田吐夢特集。短篇3本『漕艇王』『天国その日帰り』『少年美談 清き心』と、『喜劇 汗』を見る。どれも素晴らしかった。特に『漕艇王』は、木登りの喧嘩や橋からのダイヴなどのタテと、馬やボートが走りまくるヨコの画面の動…

出勤より早く家を出て、神戸ハーバーランドのOSシネマズで、宮崎駿の『君たちはどう生きるのか』を初回で見る。まったく中身の知らぬままに、宮崎駿の映画を見ることの幸せ。撮るたび映画が、巧さなどどうでもよくなり、若くなってゆく。「ヒミ」という名前…

仕事終わりに柚子と元町で待ち合せてモスバーガーで晩飯を食ってからミント神戸のOSシネマズで、ジェームズ・マンゴールドの撮った『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を見る。俳優たちは頑張っていたが、そうとう無惨な映画だった。二度は見ないだろ…

シネマ神戸でD・A・ペネベイカー&リチャード・リーコックの『1PM』と『ニューヨークの中国女』を見る。『カルメンという名の女』の伯父さんのようにテープレコーダーを撫でまわすゴダール、ディンプルもばっちり(しかし大剣が短すぎるがそれもいい)なネク…

昼過ぎ、ものすごい雷雨。これは止むだろうとその間に洗濯機を回す。すっきりと晴れる。洗濯物を干して夕方から梅田に出る。夜中にテレビをつけたら『忍びの卍』が流れていて途中から見る。面白かった。そうかこれは鈴木則文だったのか。

朝は雨。駅までの道を急ぐ。今夏初のひっくり返っている蝉を見つける。しかたがないので、指を突き出すとごそごそと足を延ばして掴んでくる。手近のフェンスに留まらせる。もう少し行くと、以前はおじいさんが一人で土を耕していたが、おそらく野菜を収穫す…

夕方から出かける。近所を撮って、福島から梅田にぶらぶらと抜けて、西天満から堂島ジュンクを経て帰路。 たとえばおなじ平面の上の表現でも、輪郭がぼんやり滲んでいたらそれは後ろの方にあるものとして空間のイリュージョンを立ち上げてしまうとき、私たち…

テレビの前の椅子に陣取っている「しま」を抱っこする。「しま」を抱えたまま、彼女の温もりのある座面に腰掛けて、テレビ台に載せてある小さな爪切りをとる。膝の上に乗せた「しま」の足先を柔らかく握って、飛び出した爪を切る。彼女はとても親切なので、…

新今宮まで行って写真を撮ろうと環状線に乗っていると、見る間に空が濃灰色になって、土砂降りになる。車掌が慌てた声で窓を閉めてくださいと車内放送がある。傘もないし降りても撮れないので、そのまま本を読みながら何周かして驟雨をやり過ごし、大阪で降…

仕事を終えて本屋を覗く。もうここ十年以上私は彼のまったくよい聴き手ではなかったのだからと自制していた坂本龍一の『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を、ぱらぱら捲っていると、やはりどうしても読みたくなり、買う。

洗濯物を取り込んだり干したりしてから、シネマ神戸でJLGの『カルメンという名の女』を見る。久しぶりに見るとそうとう『カルメン』の映画化だった。カルメンがショーツを服を全部着てから履くのがよかった。俳優としてのJLGの面白さと、JLGの映画に出てくる…

昼からシネ・リーブル神戸でアレクサンドル・ソクーロフの『独裁者たちのとき』を見る。ほぼアニメーションと言っていいだろう映画。独裁者たちが横一列に並んでいるコーチュラみたいな岩壁の舞台にゼリー状の兵士たちや群衆やらが津波のように押しかけて、…

真夜中に、EMI時代のベルチャ四重奏団でブラームスの《第一番》を聴いて、ポリーニの弾くシェーンベルクの作品集を聴いている。

アルフレッド・バーの本を読み終えて(これ復刊すればいいのに。最後に付録で載っているピカソのステートメントもとても面白かった)ロザリンド・クラウスの『ピカソ論』を読み始める。じりじりと見えてくるものがクラウスの言葉によって変わってくるさまが…

大量のピカソを見て、さっそく影響されて、積んである本の中からアルフレッド・バーの『ピカソ 藝術の五十年』を読み始める。大変よくまとまっていて図版も多くて読みやすく、モダニズムの観点から見た非常にオーソドックスな評価が時系列で述べられる。今読…

朝から出かけてシネマ神戸でシャンタル・アケルマンの『東から』を見る。照明を一本立てて、駅の巨大な待合室とか、舗道の真横から、カメラを固定して撮っているものすごく長いドリー・ショットが幾つかある。路面で物を売っている人や、たまたま横断歩道の…

昼から出かけてシネマ神戸でシャンタル・アケルマンの『一晩中』を見る。夜が明けて、ピンクとブルーの布を纏った二匹の生き物が抱き合って一つの塊のようになって身体を揺すぶるダンスのような何かのようなショットが凄かった。朝7時のモーニングコールに出…

久しぶりに九条まで出てシネ・ヌーヴォでシャンタル・アケルマンの『街をぶっ飛ばせ』と『家からの手紙』の二本立てを見る。アケルマンの映画は自爆というか内破的な終わり方をすることが多いように思う。最初の短篇である『街をぶっ飛ばせ』から既にそうだ…

朝から名古屋まで出る。高島屋で初めて「赤福氷」を食べる。とてもおいしい。 クセナキスの《ノモス・ガンマ》目当てで、名古屋フィルハーモニー交響楽団の演奏会。初っ端のバルトーク《ルーマニア舞曲》から素晴らしかった。《ヴァイオリン協奏曲第2番》も…

仕事終わりに堂山町まで出てメルツバウの『Pulse demon』のリマスターの新譜を引き取ってくる。

ようやく出来上がったチャコールグレーのほぼ無地のスーツを取りに、仕事帰りに服屋に行く。もうこれからスーツは全部鼠色にしようかと思う。本屋に寄って帰宅する。 スティーヴ・ライヒの《ドラミング》の1974年録音を聴いている。とても気持ちいい音色。

朝起きてゴミを捨ててテレビを点けたらちょうど森谷司郎の『弾痕』が始まったので見る。アジア人にあらん限りの罵倒語を並べたてる鬼畜の米国工作員どもを射殺するのは北京から送り込まれた佐藤慶で、加山雄三ではない。加山は佐藤慶と、東西のどちらの陣営…

朝から新幹線で豊橋まで出て、穂の国とよはし芸術劇場プラットで須田亜香里の主演舞台《Bumblebee7》を見る。須田亜香里の身体のキレと声の良さは健在。市議選の選挙運動の中を写真を撮りながら駅前をぶらぶら歩き、「スパゲッ亭チャオ」の本店で昼飯を食っ…

朝から出かけてシネ・リーブル梅田でアレクサンドレ・コベリゼの『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』を見る。たびたびスナップ写真を撮っているような気分になる映画だった。少し長すぎるような気もするが、あとで思い出すのはおそらく普通なら切…

NMIXXの《Just Did It》という曲がいい。洗濯機を回して、アレックス・ガーランドの『エクス・マキナ』を見る。肉じゃがで少し早い昼食をとって、少し長い昼寝をする。富岡多恵子も死んだ。一柳慧の最も優れたルポルタージュも入っている『行為と芸術』はと…