映画

ジュスティーヌ・トリエの『ソルフェリーノの戦い』を見る。『愛欲のセラピー』からヴィルジニー・エフィラの良さを抜いてしまうと、これがまだいちばんいい。おやじがベビーベッドで眠る子供の写真を撮るのだが、まるで死体を撮っているような気持ち悪さ。…

ジュスティーヌ・トリエの『愛欲のセラピー』を見る。ベルトラン・ボネロの傑作『サンローラン』のギャスパー・ウリエルが出ていて、そういえばもう彼は死んだんだったと思う。ヴィルジニー・エフィラの顔は好き。途中からゴダールの『軽蔑』ごっこのような…

昼に起きる。「しま」のごはんを準備して、枕カバーを洗う。洗濯機を回す。ロベルト・ユンクの『千の太陽よりも明るく』を読んでいると、レオ・シラードが出てくる。彼は1898年のハンガリー生まれである。それなら『黄金列車』のバログと、ほぼ同い年だ。ヴ…

ぶらぶら歩いて湊川公園まで出てパルシネマでジム・ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』を見る。最初のショットからもう、ロビー・ミューラーの映像が見事で、むしろ、これを見に来たのだと思う。フレームの中にどんな光で、どんな物が、どれぐらい入っ…

朝から雨がざぶざぶ降っている。駅前の横断歩道のすぐ脇の低い街灯の上に濡れたカラスが留まっていて、どこかビルの上にいるらしいカラスと同じメロディで鳴き交わし合っている。シネ・リーブル神戸でタル・ベーラ(アサイヤスや黒沢清や鳥山明や岡崎乾二郎…

先日JLGの『軽蔑』を映画館で見て、とても感心したので、アラン・ベルガラの『六〇年代ゴダール』を図書館から借りてきて、『軽蔑』の章を読む。大変面白いことが幾つも書いてある。 彼は、撮影時に最終的につかうことのできる材料(俳優、舞台背景、天候な…

今日から封切りの『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』を仕事のあとに見られるのが判ってチケットを押える。久しぶりに、最前列のど真ん中の席を取った。今日はJLGへの弔いの焼香のようなものなのだから、スクリーンと私の間に、誰も入れずに見…

朝起きると美しくて淋しいピアノ協奏曲の断片が耳に鳴っている。夢で聴いていたのだろう。音楽だけが残っていて、夢の内容は判らない。木管が前に出て、それがピアノに受け渡されて短いフレーズを弾き、弦楽の調べが緩やかに包み込んで終わる。おそらく実際…

仕事のあと神戸駅のモスバーガーで柚子と晩ごはんを食べて、ふたりでハーバーランドのOSシネマズで三宅唱の『夜明けのすべて』を見る。上白石萌音が職場でシュークリームを配るシークェンスがある。コンビニやスーパーで売っている個包装のシュークリームは…

仕事のあとシネマ神戸でデイヴィッド・フィンチャーの『ザ・キラー』を見る。マイケル・ファスベンダーがヨガで身体を整えながら最初の狙撃を待っている間に眠くなるが、ひたすらモノをあちらからこちらに移してゆくお仕事映画として、とても楽しかった。弁…

仕事の帰りにミント神戸のOSシネマズで北野武の『首』を見る。 緑の川の浅瀬で、切り株のようになった兵隊の首を食っている真っ赤な蟹のショットからふと『ツィゴイネルワイゼン』を思い出すが、この映画の緑とは、利休の椀の中の抹茶だろう。利休の茶で媒介…

このところずっと家で溜め込んだ大島渚のDVDを見ているだけだったので、久しぶりに映画に行こうと思うが、もう今何をどこでやっているのかも判らない。あれこれ調べながら洗濯機を回す。風呂に入って、午後から出かけて、シネ・リーブル神戸でケリー・ライカ…

今朝も「しま」はいつの間にか寝室にやってきていて、窓際で眠っている尖った耳の先がふたつ、その下で寝ている私には影絵のように見える。「しま」とふたりで柚子より先に起き出して、あんぱんを食べて、お重を引っ張り出してきてお節を突く。TVでマキノ雅…

朝起きて、TVを点けたらやっていた片岡千恵蔵の忠臣蔵映画が、どのショットもとてもモダンでたまらない。鳥籠の影と黒猫の使い方の巧さと、サディスティックなエロ。あとで調べたら佐々木康の『女間者秘聞 赤穂浪士』で、撮影は三木滋人だった。

パルシネマしんこうえんで三隈研次の『とむらい師たち』のトーク。ガンメンの最初の仕事で三隅は、写し取られた死顔と写し取ったデスマスクの顔をひとつのフレームの中に収めている。この関係で言えば、葬博は万博のデスマスクである。この映画を見て、《太…

真夜中に大島渚の『白昼の通り魔』を再見する。ミナミの盛り場から始まってどんどん背景が真っ白になってくる川口小枝と小山明子の対峙がものすごい。『悦楽』の湯浅譲二の音楽もよかったが、この林光の音楽もとてもかっこいい。『悦楽』に続いて撮影は高田…

朝起きてTVを点けたらすかんと寒い空を背景に、斜面を滑り降りてくる男を少し離れて捉えている、いい黒白の映像が映っていて、思わず凝視しているうちに男は三國連太郎で、これは内田吐夢の『飢餓海峡』だと判る。ずいぶん前に見たのだが、もうすっかり忘れ…

本屋で取り寄せた『シナリオ』の2023年9月号を引き取ってくる。田村孟の『飼育』のシナリオが載っている。石堂淑朗が「わが敵大島渚」で、「大島作品の撮影では、撮影の進行と共に脚本が変更され、脚本は撮影終了と共に完成する、という傾向であった」と書い…

朝とても早く眼が覚めて、大島渚の『天草四郎時貞』を見る。 IVEの《Off The Record》のMVもとてもいい。 朝からリュックに「しま」を詰めて歩いて病院に。血液検査をしてもらう。いやいや入れられたリュックに、診察が終わるといつも「しま」は自分からすっ…

朝から「しま」が盛大に吐いて、出勤前の柚子と片づける。その後、お昼にも、もういちど吐いて、朝はほとんど水ばかりだったが、今度はそれなりの大きさの灰色の毛玉が出ていた。 居間で大島渚の『飼育』を見る。『日本の夜と霧』のあとの混乱の情況の中で、…

風邪を引くと映画を見る気力も体力も削がれる。ユスターシュを見に行こうかとも思うが、やはりこっちだろうと、ようやく朝から夜中までだらだらと、積み上げたDVDの上から『太陽の墓場』と『日本の夜と霧』と『飼育』を途中まで。しかし『青春残酷物語』(19…

ほとんど寝て過ごす。喉が痛い。大島渚の『戦後映画』を読み終えて『青春』を読み始める。「闇を犯しつづける葬儀人に一切の権力を!」ってよく意味の判らないすごい副題がついているけど、38歳のときの大島が自分の青春時代を振り返るインタビュ本で、『大…

仕事終わりにシネ・リーブル神戸でデイヴィッド・クローネンバーグの『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』を見る。冒頭のクルーズ船が浜辺で横倒しになって錆びているショットから不穏で、澱んでおり、いい。香水の匂いが変わるような不可視の発情の瞬間…

帰宅して夕食を食べてから、ようやく発表順に積み上げた大島渚のDVDのいちばん上から手を付けて、『愛と希望の街』を見る。久しぶりに見るがますます凄烈。風景と鳥籠(ガスタンク)と犯罪(に差し向ける母)と空虚な銅像とそのまわりで遊ぶ兄妹など、大島渚…

仕事帰りにミント神戸でグレタ・ガーウィグの『バービー』を見る。現代のYA世代のためのよくできたデート・ムーヴィ。この程度の微温的な主張に「フェミニズム」と難癖をつけるのは、さすがにミソジニーが過ぎる。裂け目を綴じるために現実の世界に行って、…

仕事の帰りにシネ・リーブル神戸で『エドワード・ヤンの恋愛時代』を見る。本当にしみじみと、いい映画を見たと思いながら席を立つ。またすぐもう一度見たくなる。パンフレットも買って帰る。

某所の視聴覚室で三隅研次の『とむらい師たち』を見る。《太陽の塔》に対して、空気で膨らむ水子地蔵の塔が中之島の畔に立つ。勝新太郎のつぶらな瞳はやがて総てを呑み込む大きな穴ぼこになる(女の不在を考えてもいいだろう)。死者の顔の上に石膏を叩き付…

夕方から出かけてシネマ神戸でダニエル・シュミットの『天使の影』を見る。ファスビンダーの戯曲《ゴミ、都市そして死》を映画化したもの。親子や恋人たちの情愛もシスターフッドの紐帯も何もかも、貧困と格差と暴力によってずたずたに分断される。その渦に…

佐藤哲也さんが亡くなられたことをけさ知る。とてもつらい。ご冥福を。 東京都写真美術館で「風景論以後」展を見る。瞠目の展示というほどではなかったが、並んでいるものがもともと大好きな清野賀子や中平卓馬や大島渚なのだから、それだけで楽しい。崟利子…

そろそろ退勤という頃に空が黒く翳ってきて、夕立というよりはゲリラ豪雨のような大雨。革底の靴が濡れるのも困るのでバスで阪神三宮駅まで出て、九条のシネ・ヌーヴォまで出る。阪神で行くと一本なので、ずいぶん便利だというのに最近気づいた。ジョン・カ…