映画

某所の視聴覚室で三隅研次の『とむらい師たち』を見る。《太陽の塔》に対して、空気で膨らむ水子地蔵の塔が中之島の畔に立つ。勝新太郎のつぶらな瞳はやがて総てを呑み込む大きな穴ぼこになる(女の不在を考えてもいいだろう)。死者の顔の上に石膏を叩き付…

夕方から出かけてシネマ神戸でダニエル・シュミットの『天使の影』を見る。ファスビンダーの戯曲《ゴミ、都市そして死》を映画化したもの。親子や恋人たちの情愛もシスターフッドの紐帯も何もかも、貧困と格差と暴力によってずたずたに分断される。その渦に…

佐藤哲也さんが亡くなられたことをけさ知る。とてもつらい。ご冥福を。 東京都写真美術館で「風景論以後」展を見る。瞠目の展示というほどではなかったが、並んでいるものがもともと大好きな清野賀子や中平卓馬や大島渚なのだから、それだけで楽しい。崟利子…

そろそろ退勤という頃に空が黒く翳ってきて、夕立というよりはゲリラ豪雨のような大雨。革底の靴が濡れるのも困るのでバスで阪神三宮駅まで出て、九条のシネ・ヌーヴォまで出る。阪神で行くと一本なので、ずいぶん便利だというのに最近気づいた。ジョン・カ…

仕事が終わるとさっさと神戸駅まで出て、地下のうどん屋でカツカレーうどんを食べるから新開地まで出て、商店街をぶらぶら。それからシネマ神戸でライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『マリア・ブラウンの結婚』を見る。ファスビンダーは、フレームをと…

仕事が終わると、ちょうど外で激しい雷鳴が轟く。傘を掴んで、シネマ神戸まで出て、フランソワ・オゾンの『苦い涙』を見る。ペトラをペーターにして組み立てた映画だが、涙の苦さはずいぶんマイルドになってしまっていて、ハメ撮った映像と戯れるラストなど…

仕事の帰りにシネマ神戸でライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』を見る。途中までどうやって見ればいいのかなかなか掴めなかったのだが、ようやく「ああこれは《椿姫》だ」と思い到ると、一気に映画に鷲掴みにされた。…

仕事の帰りにシネマ神戸でライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『不安は魂を食いつくす』を見る。ほとんど露悪的なまでに悪意や差別や裏切りや傲慢が描かれ、どんなに虐げられている人たちもそれらから自由であることはできない。しかし、それでも、指先…

柚子と元町で待ち合せてモスバーガーで夕食のあとミント神戸で行定勲の『リボルバー・リリー』を見る。綾瀬はるかを主演に迎えて、こんなに勘が鈍く、間の悪い映画になってしまっているのは、監督が悪いのか脚本が悪いのか。最近また映画を見るようになった…

仕事のあとシネマ神戸でロバート・アルトマンの『ロング・グッドバイ』を久しぶりに見る。LAでは出て行った猫は見つからず、野良犬が路傍にごろごろしているメキシコで終わる。昔見たときは最後の一本道のショットは彼岸の風景だと思ったが、何が彼岸だ、そ…

朝から職人が来て檜葉の木を伐る。あとで柚子から連絡を貰ったら25000円(税別)払ったという。話が違うと思ったが払ってしまったのなら仕方がない。仕事のあとにシネ・ヌーヴォでソクーロフの『牡牛座』を見る。ころんと突き転ばされるクルプスカヤや車椅子…

ネットで探した近所の造園屋が、朝、見積もりに来る。これが檜葉だというのを初めて知る。 数か月前、路地を挟んだ前の家の婆さんが、延びっぱなしなのが怖いので、短く伐ってほしいと言ってきた。私は、「あなたに何の関係がある」と言った。こうやってご近…

シネマ神戸でロバート・アルトマンの『雨にぬれた舗道』を見る。大昔の火曜サスペンス劇場みたいな映画だった。娼婦を斡旋するバァのカウンターで何かをぼそぼそ話している(愚痴を聞いているようでもあり、励ましているようでもある)女二人のイメージが、…

シネ・ヌーヴォで渋谷実の『バナナ』をようやく見る。グルメと戦前戦後の日中関係と夫婦とコスモポリタニズムと空手とシャンソンとよろめきとバナナ師たちの映画だった。とても面白かった。一瞬止まって、素早く動き出す岡田茉莉子の挙動の何もかもがキュー…

庭の木を半分ほどの高さに伐ってもらおうと造園の業者に電話をするが、見積もりの日取りは決めずにもやもやと切る。 洗濯物を干して、午後から出かける。福島で降りて梅田まで出て阪急烏丸。京都文化博物館で、鈴木仁篤とロサーナ・トーレスの『TERRA』を見…

昼から出かけて神戸映画資料館で内田吐夢特集。短篇3本『漕艇王』『天国その日帰り』『少年美談 清き心』と、『喜劇 汗』を見る。どれも素晴らしかった。特に『漕艇王』は、木登りの喧嘩や橋からのダイヴなどのタテと、馬やボートが走りまくるヨコの画面の動…

出勤より早く家を出て、神戸ハーバーランドのOSシネマズで、宮崎駿の『君たちはどう生きるのか』を初回で見る。まったく中身の知らぬままに、宮崎駿の映画を見ることの幸せ。撮るたび映画が、巧さなどどうでもよくなり、若くなってゆく。「ヒミ」という名前…

仕事終わりに柚子と元町で待ち合せてモスバーガーで晩飯を食ってからミント神戸のOSシネマズで、ジェームズ・マンゴールドの撮った『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を見る。俳優たちは頑張っていたが、そうとう無惨な映画だった。二度は見ないだろ…

シネマ神戸でD・A・ペネベイカー&リチャード・リーコックの『1PM』と『ニューヨークの中国女』を見る。『カルメンという名の女』の伯父さんのようにテープレコーダーを撫でまわすゴダール、ディンプルもばっちり(しかし大剣が短すぎるがそれもいい)なネク…

もしかしたら間に合わないんじゃないかと焦りながら仕事を終えて、シネ・リーブル神戸に向かう。予告編の間に飛び込んでポール・シュレイダーの『カード・カウンター』を見る。狭い部屋からどうやって出るか(俺みたいになるな、蝕まれるぞ、出られなくなる…

洗濯物を取り込んだり干したりしてから、シネマ神戸でJLGの『カルメンという名の女』を見る。久しぶりに見るとそうとう『カルメン』の映画化だった。カルメンがショーツを服を全部着てから履くのがよかった。俳優としてのJLGの面白さと、JLGの映画に出てくる…

昼からシネ・リーブル神戸でアレクサンドル・ソクーロフの『独裁者たちのとき』を見る。ほぼアニメーションと言っていいだろう映画。独裁者たちが横一列に並んでいるコーチュラみたいな岩壁の舞台にゼリー状の兵士たちや群衆やらが津波のように押しかけて、…

シネ・リーブル神戸でトッド・フィールドの『TAR/ター』を見る。俳優たちは楽しそうでカメラはきれいだが、思わせぶりが過ぎる。思わせぶりをいいことに、勝手にこじつけて、ああだこうだ自分の好きなことを言えるのがいい映画なのではない。映画を何かを言…

全然関係ない音楽をかけてサイレント映画を見ると、その合わなさから画面のリズムがくっきりしてくる。スタンバーグの『暗黒街』を見ながらテツラフとギーレンのバルトークの《ヴァイオリン協奏曲第2番》を聴いていると、そのズレと、ときどきの絶妙な噛み合…

久しぶりに九条まで出てシネ・ヌーヴォでシャンタル・アケルマンの『街をぶっ飛ばせ』と『家からの手紙』の二本立てを見る。アケルマンの映画は自爆というか内破的な終わり方をすることが多いように思う。最初の短篇である『街をぶっ飛ばせ』から既にそうだ…

アレックス・ガーランドの全8話のテレビ・シリーズ『DEVS』で、最も好きなのは、寝室の椅子をめぐるシークェンスだ。 恋人たちの寝室の片隅に、背もたれの低い一脚の椅子が、ベッドのほうを向いて置かれている。寝る前に脱いだ服を、とりあえず投げかけてお…

朝起きてゴミを捨ててテレビを点けたらちょうど森谷司郎の『弾痕』が始まったので見る。アジア人にあらん限りの罵倒語を並べたてる鬼畜の米国工作員どもを射殺するのは北京から送り込まれた佐藤慶で、加山雄三ではない。加山は佐藤慶と、東西のどちらの陣営…

朝から出かけてシネ・リーブル梅田でアレクサンドレ・コベリゼの『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』を見る。たびたびスナップ写真を撮っているような気分になる映画だった。少し長すぎるような気もするが、あとで思い出すのはおそらく普通なら切…

NMIXXの《Just Did It》という曲がいい。洗濯機を回して、アレックス・ガーランドの『エクス・マキナ』を見る。肉じゃがで少し早い昼食をとって、少し長い昼寝をする。富岡多恵子も死んだ。一柳慧の最も優れたルポルタージュも入っている『行為と芸術』はと…

うつらうつらしながら夜中にユーリー・ノルシュテインの傑作選をAmazonで見る。眠って起きるとそのたびに眠ったところまで巻き戻して見る。なので、全部見るのに二、三時間かかった。「アオサギとツル」のばらりと落ちる赤い実のようなネックレスの珠の驚き…