私はビジネス書を(原則として)読まない。

  • TRPGというゲームを知っていますか? アメリカ発祥のこれは、誰もが幼い頃に経験したであろうゴッコ遊びを、ルール化したものです。複数でテーブルを囲み、まずは今から自分がどんなキャラクターを演じるかを、技能値やイラストで設定します。それから会話だけで、テレビゲームなどでおなじみのファンタジックなRPG世界の住人になりきり、その世界を冒険するゲームです。
  • TRPG冒険者が、私たちがテレビゲームでプレイしている画面の中の冒険者と異なるのは、まぎれもなくあなた自身が、その冒険者であるということです。しかしそれは、あなたそのものではありません。あくまでも或るキャラクターであり、あなたの顔や声や肉体や思考を媒介として顕れてくる、まったく別の誰かです。
  • (中略)営業マンとしてのあなたは、言うならばTRPG冒険者と同じです。ですから、もしあなた本来の性格が短気で喧嘩っぱやいとしても、営業マンのあなたもそのような性格であるとは限りません。あなたは、営業マンとしてのあなたに、どんな設定を与えたのでしょうか? 思慮深く穏やかな性格という設定を与えたのに、常にブチ切れていては、そのキャラクターは立ち上がってきませんよね。
  • もしあなたが営業先での交渉で、苛立ったり相手の言葉に傷ついたりしたときは、ぜひ思い出してください。営業マンとは、TRPG冒険者です。あなたという生身の人間が、苛立ったり傷ついたりしているのではありません。
    • 早川健五郎『オタクも昼間は営業マン』(行燈出版)より抜粋。