- 柚子の出掛けたのを知らぬまま、10時過ぎ起床。昨晩の夕食の餃子をそのまま食べる。久しぶりに皿洗い。本を少し整理して、正午過ぎに出掛ける。Uくんと、彼の会社の近所のファミレスで昼食とミーティング。昼食代と、先日買った『地獄の黙示録』のDVDを交換する。飯野賢治のセガサターン最後のゲーム『風のリグレット』*1のOST(音楽は鈴木慶一!)のコピーをもらう。
- いちど家に戻り、メトロポリタン歌劇場の『パルジファル』第一幕を少し観る。恐ろしいほどオーソドックスな演出。クンドリを歌うヴァルトラウト・マイヤーの美しいことよ。
- 5時過ぎに再び出掛け、柚子と梅田で落ち合う。今夜はF大兄と某劇団主宰M氏から誘われた『ローレライ』*2観賞会なのである。軍事とガンダムに空恐ろしいほど造詣の深いM氏とF大兄は「んなものシラフで観れるか!?」と、居酒屋で猛然と燃料を補給中。その末席に連なり、開演までの2時間ほどを、呑んで食ってバカ話の応酬。柚子が困った顔で私たち三人を見ていた。その後、M氏とF大兄と親しいHさんもくる。
- 福井晴敏の小説『終戦のローレライ』は大変な駄作だった。『ローレライ』の監督である樋口真嗣が手がけた上下巻の装丁はとても美しかったが、中身はスカスカ。『ガンダム』を観ているほうが百倍マシ。読み終えると即行で売り飛ばした。
- 樋口真嗣の仕事には、これまでに幾度も唸らされている。たとえ『ローレライ』の筋書きが『エヴァ』と『ガンダム』を『Uボート』で割って、薄い薄い水割りを作ったようなものでも、樋口の作る映像の力には期待を禁じえなかった。しかし結果は、お寒い映画だった。現在の日本の役者では、生半可なことでは兵隊の顔にならない*3。映画ではなく、夏の3時間特別TVドラマで充分。
- だが、この寒さは、観る前から予想されたそんな事柄に起因するのではない。世界最高の特技監督である樋口真嗣が本編も撮らねばならないと云う、現在の日本映画界の貧しさに起因する寒さだ。現在の邦画は活況が喧伝されるだが、それは特技監督としての樋口真嗣の才能を全開にさせる場所を与えられない程度の、小粒な映画しか撮られていないと云うことでしかない。もちろん『ローレライ』の特技監督は樋口が兼ねているが、本編の監督の樋口1は特技監督の樋口2から、いつも樋口2が作るパワーのある映像を、まるで引きだせていなかった。
- 皆と別れたあと、駅の階段で柚子が、「戦争映画じゃなくて、特撮映画だったね」と呟いた。そうなのだ。心の片隅の何処かで、東宝の8・15シリーズの再来を期待していた私が馬鹿だったのだ……。
- あと、富野由悠季大先生の海軍将校姿がしっかり映っていなかったのが不満だ!
- 行定勲が三島由紀夫の不敬恋愛小説『春の雪』を撮ると云う予告篇で吃驚。『ローレライ』も天皇を殺そうとする映画だったが、東宝映画は不敬が流行中?
- 帰宅後、酔い覚ましに入浴。明日は柚子家の墓参り。