きょう買った書籍

  • 内田樹名越康文『14歳の子どもを持つ親たちへ』(新潮新書
    • そう云えば、新潮新書を買うのは、これが初めてだ。内田樹は、既成概念の枠を破砕してまったく新しい思想を打ち立てる思想家ではない。寧ろ既成概念の枠の中で、私たちが漠然と感じたり考えているのだが、ちゃんと掬い取れていないものやことを、「そのもやもやって、こんなかたちじゃないですか?」と具体的に提示する思想家だ。外科手術ではなく、整体みたいな思想、と云えるだろうか。
    • この本の中で内田は、酒鬼薔薇聖斗の事件に事寄せて、思春期の頃に観念が肥大し過ぎて危険なレヴェルまで高まった子どもを緩和するのは、ひとつにはやはり同じような状態になっている友だちだと述べる。やっぱり内田樹は市井の賢人だなぁ、よく判ってるよとしみじみ。
    • 私も、地元の小学校での生活がとてもきつくて、内面の生活は観念が肥大し(小学校のときの愛読書はドストエフスキーの『罪と罰』。ただし主人公が金貸しの婆ァを、得手勝手な超人思想の実践として、斧でぶち殺しちゃう処まで)、大変やばい状態に陥っていた。だが、地元を離れて私立の某中学に進学したとき、ナチス電撃戦の暴力の美に酔ってニーチェハイデガーを誤読したりワーグナーをナチの御用音楽家として大音量でガンガン聴いたりタルコフスキーや『地獄に堕ちた勇者ども』を観たりダンテの『神曲』を地獄篇だけを読み……と云うようなことを一緒に平然とやってくれる友だちができて、私は救済された。それが今に至る親友のIくんなのだが、彼は同時に私にゆうきまさみ安永航一郎の漫画を読ませ、富野由悠季の狂気の世界に導き、『装甲騎兵ボトムズ』の鉄の美学を理解させ、ガイナックスの凄さを目玉に叩き込み、さらに決定的だったのが、押井守と云う映画監督を教えてくれた。気づけば私は、立派なオタクに教育されて、いつの間にか邪悪な観念の肥大は、さっぱりと治療されていた。