きょう買った古書

  • 山田寛『ポル・ポト〈革命〉史 --虐殺と破壊の四年間--』(講談社選書メチエ
    • 三宮の古本屋にて。ポル・ポトは、嘘と裏切りを繰り返す大人たちと違って、子供だけが純粋で穢れがなく、革命の真の担い手となることができると信じていた。だから強制収容所の獄吏はローティーンの子供ばかりで、彼らが残酷な虐殺を繰り返していたのは有名な話だが……。以下に引用するのは、革命前に英語の教師をしていて、収容所に送られた男の実話だ。

多くの囚人仲間が殺され、女性や子どもの囚人も拷問を受けて悲鳴をあげていた。ある夜、最終的に他の三七人の囚人全員が連れ出されて殺された。しかし彼だけが助かった。なぜか。その約三週間前から、彼は十代の子ども看守たちに、イソップ物語や動物の話を話して聞かせていた。子ども看守たちは、目を輝かせて聞いた。学校にまったく行っていない子どもたちには、それこそ新鮮で興味深い物語だったろう。彼は「物語名人」として敬意を表されるようになった。だから、囚人を殺せとの命令を上から受けた時、彼らは話し合い、「物語名人だけはもったいないから殺さないでおこう」と決めたという。(146頁)