- 映画の日なので柚子と映画を見に行こうと誘ったが、風邪っぽいとのこと。
- 元町で待ち合わせ、柚子が行きたいと云うので「お月見猫王様の不思議な銘茶館」*1なる、いわゆるメイド喫茶へ。
- メイド喫茶特有の「お帰りなさいませ〜」に慣れない私には、それを云われないのは救いである。
- 伝票挟みと一緒に絵本がついてくるのだが、その絵本には此処がどのようなお店なのかが、幻想小説ふうの短いお話で説明されていて、そのコンセプト主義にふと、「バブルの再来か?」と思う。
- 柚子が、些か図式的なメルヒェンの内装を一瞥して、「何だか、ラブホみたい」と小さく呟いた。
- ワゴンで茶器を運んできてくれるのだが、そのワゴンが床を滑る際の、ガラガラゴトゴトと云う音がえらく大きくて、少し驚く。
- 「メイド」さんの接客は、些か慣れない感じで、それではどうもこちらが恐縮すると云うか、いたたまれない気持ちになる。
- お手洗いの扉の取っ手が、猫の後ろ姿を象っていて、この可愛らしさには感心。
- しかし、最もいただけなかったのは、この店のオーナー(店長?)の女性が、客席で雑誌か何かの取材を受けていて、大きな声で店のコンセプトやら「メイド」(とはこのお店では呼ばないそうだ)の教育方針やらを、得々と語っていたことである。
- コンセプトを売りにしようとするなら、店の中でコンセプトを語るなど、愚の骨頂である。手品師が手品を見せながらタネをばらすのと同じである。そう云うことは、店の中で喋るべきではない。バックヤードか何処かでやるべきことだろう。
- 嘗て泉鏡花が(正確には、沼正三がそれを引いていたのを私は読んだのだが)作家はあとがきや解説など書くべきではない。それは歌舞伎の女形が、楽屋でスネ毛を剃っているのを見せるのと同じことだ、と云うようなことを書いたらしいが、これと一緒である。
- 少なくとも私は、メイド喫茶は、もう懲りごりである。