村上がもくろむのは、いまや日本のオリジナリティを代表するといっても過言ではないオタク文化を、ただたんに現代美術の領域に引水し、美術の概念を拡張すると称してそれを植民地主義的に搾取するのではなく、オタク文化それ自体が戦後日本のアメリカによる「植民地化」を土壌に生まれたものであり、このことに関していえば戦後日本、とりわけ一九五五年以降、アメリカによるこの植民地化が急速に進むことによって生まれたいわゆる「現代美術」もなんら変わることがない----いかなる高品質の「現代美術」であっても、その「最高品質性」は田宮模型と同様、その下地に「アメリカの国旗」を敷いている----ことを示すために、美術作品とオタク製品との相同性を、しかしあくまで「あいまい」に、しかしときに破廉恥ととられることも辞さぬほど「スキゾフレニック」に明示するというものだからだ。