大野和士が大阪フィルを振る

  • 終業時間になると会社を必死に駆け出る。大野和士大阪フィルハーモニー交響楽団を指揮する*1を聴きに、福島駅で待ち合わせて柚子とシンフォニーホールへ。
  • 座席はオーケストラの裏側で、ちょうど指揮者に直面する。最初はモーツァルト交響曲33番。大野は大変軽やかな表情で、すいすいとオーケストラをドライヴしてゆく。
  • 細川俊夫の打楽器協奏曲「旅人」。全身で音楽を進行してゆく大野の姿は、先程のモーツァルトの時とは打って変わって、まるで前衛舞踏家のそれ。音楽が終わると、たった数十分の演奏の間に、めっきりと老いさらばえてしまったかのような相貌。大野自身が「旅人」だったのだ。現代音楽こそ、ナマで聴くのがいちばん良い。
  • 続いてショスタコーヴィチ交響曲第15番。オーケストラが些か力不足で、管楽器の音が頼りない箇所がまま見られたが、それらを差し引いても素晴らしい熱演だった。ぐいぐいと惹きつけられ、音の渦の中に巻き込まれる。非常に熱のこもった演奏なのだが、各部がバラバラ&グチャグチャになると云うことはない。それぞれの音をちゃんと聴かせつつ、爆走してゆく大野の音楽は非常に毒がある。こちらと会場の側の遠近感がなくなり、視界がどんどん大野の指揮をする姿にだけ引き絞られて貼り付いてしまい、遠近感が失われる。大野の指揮はシルヴィ・ギエムのダンスよりスゴイ。
  • 私のクラシックのナマ演奏の経験の大半は非常にお粗末なものばかりだが、中学生の時に聴いたベルティーニの感動を、今夜の演奏は思い出させてくれた。大野和士はスゴイ。何が何でも、今冬のモネで『トリスタンとイゾルデ』を聴こうと心に決める。
  • すっかりお腹が空いたのだが、何だか柚子も私も妙にフライドポテトが食べたくなり、福島駅の近くのマクドナルドに入り、遅い夕食を取る。