- 三宮のタワーレコードでムラヴィンスキーのライヴ盤を今日も買う。
- 佐藤亜紀の『外人術』読了。日頃じぶんが身につけているシャツの値段と泊まるホテルの料金は等しくすべし、などの記述には膝を打つ。だが、本当に素晴らしいのは「あとがき」に書かれた、ワグラムの古戦場に佇むアメリカ人観光客のエピソード。たぶん佐藤亜紀の以外の誰が其処にいても、このアメリカ人が味わった至福を掬い取り、われわれの眼前に再生させることはできなかっただろう。この挿話は、ちょっと感動的である。ぜひ原文を当たって呉れ給え。
- 滝本誠の『きれいな猟奇』を読み始める。『映画の乳首、絵画の腓』での予告の通り、水死体から開巻するのが嬉しい。ただ、図版が少ないのが些か悲しい。
- 昨日買ったムラヴィンスキーの1979年の東京ライヴ盤を聴く。ベートーヴェンの「田園」とワーグナーの管弦楽。高い評判はあちこちで目にしていたが、いやあ、これほどのものとは! 何でもっと早く聴かなかったんだと後悔しきり。外はしっかり、中はとろとろ。一音一音の構築は硬質で、細部まで磨き上げられてスパッとしているのだが、編み上げられた旋律は、狂熱寸前の濃厚なロマンティック。だが、些かも濁りはなく非常に透明。私が理想だと思うクラシック演奏のひとつの典型例。もしクラシックのCDを一枚だけ持っていたいと云うひとがおられたら、迷わずこれを薦める。素晴らしい。