- アンデルセンの『絵のない絵本』を読み終える。ひとつひとつの話がこちらに要求してくる解像度の密度が濃いので、きのう一日で読み終えるつもりが、意外に時間が掛かった。
- まず、描写が巧い。そして、幼い子供と動物へ向けられる目は常に変わらず温かいが、大人やその社会には、なんと冷めた目を注いでいることか。アンデルセンもまた、怖ろしい作家のひとりであったのだ。
- 会社の近くの某大型古書店の百円棚を漁った以外は、のらのらと仕事。
- ジュンク堂をぶらついていると、永久放置かと思っていたサルトルの長大なフローベール論『家の馬鹿息子』の翻訳第3巻が、第1巻と第2巻の新装版と共に出ていて、先日のドゥルーズの『シネマ』のとき以上に吃驚する。
- 巻末の海老坂武のあとがきによると、平井啓之、海老坂武、鈴木道彦、蓮實重彦の四人の訳者のうち、三人は15年前には翻訳を終えていて、一人の遅れの所為でこんなにも第3巻の刊行が遅れたと云う。平井は既に没しているが、翻訳は終えていたと書かれている。遅れまくったその一名にだけではなく、督促を積極的に行わなかった人文書院にも怒りを爆発させている海老坂自身がまさか犯人ではないだろうし、となると残りはプルースト鈴木か、『ボヴァリー夫人』論の刊行が待たれる蓮實と云うことになる。さて、どっちだ!?*1
- だが、さらに問題なのは『家の馬鹿息子』の翻訳は、まだ三分の一が残されていて、それに該当する第4巻、第5巻の翻訳が出るかどうかは判らない(少なくともこのメンツでは行われない)と、はっきりと書かれていることなのだ。それは困るぞ!