- 試写で『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』*1を観る。素晴らしい傑作。テリー・ギリアム版『ハート・オブ・ダークネス』であるドキュメンタリィ映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』を撮ったキース・フルトン&ルイス・ペペ監督による待望の新作。ブライアン・W・オールディスが彼らをモデルに小説を書き*2、ケン・ラッセルが、結局は完成させることができなかった映画で取り上げた、あの1975年の英国のダークサイドを代表するロックバンド、「The Bang Bang」のドキュメンタリィ映画である。腹部で繋がったままのシャム双生児だったギターとヴォーカルのトム&バリー・ハウ兄弟(ぞくぞくするほど美しい)を、ニューヨークを代表するドキュメンタリストであるエディ・パスクワが撮影していた当時の貴重な映像と、「The Bang Bang」の終焉から約三十年を経た、関係者たちへのインタヴュウで綴られる。もちろんケン・ラッセルも登場し、未完に終わった映画の断片も公開されているのが嬉しい。……と云う仕掛けで作られているフェイク・ドキュメンタリィである。しかし、ドキュメンタリィとフェイク・ドキュメンタリィの差などない。
- 千葉潤の『ショスタコーヴィチ』を読み終わる。最新のショスタコーヴィチ研究の成果も盛り込まれて、過不足なく作曲家の生涯と作品が紹介されており、小さな本だが非常に内容は充実している。取りあえず一冊、ショスタコーヴィチの本が欲しいと云うひとは、これを持っていれば良い。そう云えば、ケン・ラッセルはショスタコーヴィチの映画を撮りたいと熱望していたと、実相寺昭雄が書いていたなぁ。
- ちなみに、スターリンによるいわゆる赤軍大粛清の際のエピソードが、すさまじい。殆どジョークである。
(トゥハチェフスキイ元帥の)逮捕は彼の友人にまでおよび、ショスタコーヴィチも尋問をまぬがれなかったが、皮肉なことにショスタコーヴィチを尋問した人間が逮捕されたために、それ以上の追求を逃れることができた。
*2:この映画は、そのオールティズの小説からタイトルを引用している