「あづま書房」も閉店。

  • 夜半から雨。暗闇の中で薄ぼんやりと目が醒め、隣で、やはり眠りを中断されたらしい柚子とふた言み言交わして、何を話したかはもうはっきりと思い出せない、そのまま再び眠りに沈む。
  • モトコーのなかの「あづま書房」が店を閉めていた。隻腕のオヤジさんが独りで営っている小さな古本屋だった。痩せて、ちょっと苦味のある男前だったオヤジさんは、たぶん競馬好きで、日曜日の昼に行くとたいてい競馬の中継をラジオで聞いていたのだったが、彼が座るカウンターの真後ろの棚には、三島や澁澤や種村などの稀覯本が並べてあり、エロ写真集なども置いている店なのだが、おやじさんの趣味も見えて、ぴりっとした空気も漂う、如何にも古本屋と云う古本屋だったのだ。
  • U君に誘われた、と或るシナリオ教室の見学に仕事を終えたら出掛けるつもりで、柚子にも連絡をつけていたのだが、珍しく同僚の女性が、社長や他の同僚への不満を私にぶちまける。参ったなぁ、こりゃ間に合わないぞと、ちらりと思いながらも、しかし七年以上この会社で過ごしてきた私にはよく判る部分も非常に多く、些かの共感を込めて彼女の愚痴を拝聴する。こういうものは、やはり誰かに聞いて貰わなければいけない。
  • 結局、私は間に合わず。やれやれ。