きょうも病臥

  • 熱は下がり、食欲も旺盛。だが、下痢はまだ止まらず。とは云え、蒲団から這い出て、PCの前にちょっと向かえる程度には快復する。
  • 調子に乗っていると、急にぐったりと疲れて、昼過ぎまで泥の底に沈んだように眠る。
  • クリストファー・プリーストの『双生児』読了。傑作。巻末の大森望の解説で挙げられているなかでは二箇所、読み飛ばしていた箇所があった。無念。これからお読みになる方は、くれぐれも冒頭に出てくる戦記ノンフィクション作家のフルネームをお忘れなきよう。
  • 許光俊の『問答無用のクラシック』を、頭からちゃんと読み始める。
  • 雨がジャバジャバ降り出した夜中に、『プラダを着た悪魔*1をひとりで観る。
  • オープニングの、朝、ベッドから抜け出したさまざまな女性が下着をつけ、化粧をし、服を選び、街へ出てゆく短いカットの積み重ねが、いきなりみずみずしくて素晴らしい。
  • 私はもともと「恋に仕事にがんばるあなたのための」と云った、この手の女性映画が非常に好きなのだが、それを差し引いてもかなりよくできた青春映画。
  • 「人間が、人間として客観的に実現されるのは、労働に於いてだけである」と云ったのはヘーゲルだが、若い奴は「所詮は家賃稼ぎの仕事ですから」なんて云って、じぶんの仕事となかなか真剣に向き合わないものである*2。だが、キチンと仕事に向き合うと云うことは、じぶんやじぶんの周りのひとたちを含めた「未来」と向き合うと云うことなのだと、この映画は真正面からズバッと描いているのがまず好ましい。それらは主に、メリル・ストリープが演じる、『VOGUE』あたりをモデルにしているのだろう『RUNWAY』誌の「悪魔」と呼ばれる名物編集長や、スタンリー・トゥッチの演じる、スキンヘッドのゲイで同編集部のファッション・ディレクターのナイジェルによって、アン・ハサウェイ演じるヒロインの新米アシスタントに向けて、ピリッとした台詞で語られる*3
  • しかし、非常に残念なことに、この映画は、ヒロインがこの職場での仕事の何たるかを理解し始め、「悪魔」と呼ばれる編集長と、職場のパートナーとしての信頼関係を、初めて深く取り結ぶことができた時点で、あっさりと仕事を辞めてしまうのだ。な、なぜだ!? 此処から仕事は面白くなるんじゃないのかぁぁぁぁっ!?
  • どうして三部作にして、アン・ハサウェイメリル・ストリープたちに揉まれながら、「仕事」と云うものに附随する喜び、辛さ、誇り、別れ、その他もろもろを経験して、やがて「悪魔」を超える、もうひとりの立派な「プラダを着た悪魔」になってゆくまでを描かなかったのか!? それだけが実に残念な映画だった。
  • ところで、スタンリー・トゥッチの演じるナイジェルの着ている服、これがもうどれも最高に素敵で、ああっ服が欲しいぃぃぃぃぃぃぃっと思う。
  • 私も痩せて、いい仕事を見つけなきゃいかんなぁ。
  • しかし、アン・ハサウェイってかなりの巨乳なのね(いや、大変結構なことで・笑)。

*1:http://movies.foxjapan.com/devilwearsprada/

*2:以上は、若くもないくせに、そういうふうな態度で仕事と接してきた私自身への自戒の言葉である。

*3:結局、映画の最後で編集長に裏切られることになるナイジェルは、それでも彼女と仕事を続けてゆく。この彼女への「賭け」は、仕事を共にしてきた永い時間のなかで醸成された、尊敬や信頼から成り立っている。これこそ、人間の「仕事」の姿ではないか?