アメリカの戦争の起源。

  • 元町のル・ビストロ*1で昼食。初めて入る店だったが、ひと皿ひと皿の量も多く、かなりしっかりとした味で、とても旨い。
  • 内田義雄の『戦争指揮官リンカーン』を読了する。
  • ゲティスバーグの戦いとアトランタ炎上しか知らない私のような不勉強な歴史好きには、南北戦争の入門書として、とても良い本だ。読みやすく、同時に中身のみっちり詰まった好著である。
  • 当時最先端のITだったモールス式電信(多くは民間人だった電信士にはハイティーンや二十歳そこそこの連中が多かった)を用いて、リンカーンは「情報を集め、将軍たちを統御し、戦争を指揮」した。
  • 鉄道と通信に代表される、ヴィリリオの云う「速度の戦争」の初の大規模な現代的展開であり、それは同時に「鉄道を破壊し、電信線を切断し、そして武器や食糧の補給基地を攻撃する戦争」であり、「敵軍を降伏させるためには、それを支える後背地の工場や施設を破壊しなければ達成され」ず、「当然ながら、非戦闘員である市民を巻き添えにする」戦争である。日露戦争第一次大戦に先駆けての塹壕戦、無条件降伏の要求、メディアの検閲と統制もこの戦争から始まるし、ヴェトナム戦争時のカムラン湾の祖形とも云える大規模な補給・兵站基地が設営されるのも、それと同時に、各業界と軍との癒着も、南北戦争時から本格化したと云う。
  • 国民皆兵の戦争をフランス革命が用意したのと同様に、デモクラシーのアメリカがふたつに分かれて骨肉の争いを繰り広げた南北戦争は、ナポレオンまでの戦争を、すっかり古くしてしまう戦争だった。

リンカーン大統領と直接会って相談したあと、グラント将軍は、騎兵隊司令官のシェリダン将軍に四万八千の兵力を与え、シェナンドア渓谷の南軍掃討作戦を命じた。シェリダンの掃討作戦は八ヵ月間続くが、南軍を追いかけるだけではなく、奪えるものは略奪し、渓谷の町や村の建物や穀物を破壊し焼き尽くし、家畜を殺した。シェナンドアの穀倉地帯は荒廃し、冬になると南軍の兵士たちは食糧の確保も困難になった。シェリダンの配下にはジョージ・アームストロング・カスターの騎兵隊がいたが、このときの掃討作戦のやり方は、南北戦争のあとに行われる西部のインディアン掃討作戦に応用されるのである。

  • 殺戮が、その場の衝動などではなく、洗練され、システム化された技術になってゆき、引き継がれ、改良され……。
  • そして、リンカーンが「内戦で勝つことは世界の民主主義を守るため」だと述べたときから、アメリカの行う総ての戦争は、どんなに遠い場所で戦われていても「内戦」になった。つまり、アメリカ人にしてみれば、南北戦争は民主主義をめぐる世界の内戦の始まりでもあったのだ。
  • ずっと期待していた『レベッカ』の新訳が本屋に並んでいるのを見つけてしまい、『世紀末のヨーロッパ』に戻る前に、そちらを読み始める。