チューリッヒ歌劇場の『ばらの騎士』を観る。

  • チェックアウトが昼の12時だったので、ホテルの階下の朝食を食べてから、再び部屋に戻り、ゴロゴロ。
  • ホテルの近くにあった古本屋に入る。想像以上に良い品揃えで、探していた本と買おうと思っていた本を同時に見つけ、ホクホク。
  • 渋谷に出る。あの「松濤温泉」を横目で眺めながらコンビニで買物。
  • オーチャードホールで、チューリッヒ歌劇場の『ばらの騎士*1を観る。
  • 柚子はナマでオペラを観るのがこれが初めてなので、オペラに良い印象を持ってもらおうと、選びに選んだ公演だったが、そう云う下心を越えて、本当に素晴らしい上演だった。
  • 聴き物は、特に第2幕と第3幕の、心地良い加速ぶりで、しかしクリスタルのような涼しく華麗な音を奏でる、フランツ・ウェルザー=メストに率いられたオーケストラ。そして、歌手たちも、オックス男爵のアルフレッド・ムフがぶっちぎりで素晴らしかったのを始め、オクタヴィアンは最近すっかり贔屓のカサロヴァ、そして想像以上に良かったのが、マリーを歌ったマリン・ハルテリウス。
  • 第3幕のラストでは、オーケストラと歌による音楽が、あんまり素晴らしくて、思わず目を瞑ってしまったほど。陶然。
  • 演出は、一見ヴィジュアル的には最新のヨーロッパ式だが、その読みや意図は、些か物足りないぐらいオーソドックスで、しかも、オットー・シェンクのようなオーソドックスならではの深みには欠ける。ただし、舞台を上下に分けた、第2幕の装置はとても良いと思った。
  • 兎に角、音楽が素晴らしかった。
  • 柚子も、きちんと満足してくれたようで、ひと安心。こんなに良いなら無理をしてでも『椿姫』も観れば良かった。最近、柚子がお気に入りのようなので(笑)。
  • 私も、すっかり、「ぽーっ」となってしまった。しかしそれは、大野和士の『トリスタン』を聴いたときのような、総ての神経が焼き切れてしまって、全身が麻痺したようになった状態ではない。好きだったひとが、私のことを好きだったと云うことを知らされたみたいな、そんな「ぽーっ」である。
  • 柚子が蕎麦を食べたいと云うので店を探すが、見つけられず駅前まで来る。駅前の立食蕎麦屋に毛が生えたような店で食べるが、それなりに旨かった。新幹線に乗り、帰路。
  • 小宮正安の『オペラ楽園紀行』を読み終える。小著だが、とても良かった。「楽園」の喪失と希求、「森」と「別荘」などを切り口に、『カルメン』、『魔弾の射手』、『椿姫』、『アフリカの女』、『タンホイザー』、『アラベッラ』、『ヴォツェック』の七本のオペラを、ヨーロッパの近代とその終焉を背景に読み解く。特に『魔弾の射手』と『タンホイザー』、『アラベッラ』の読みが鋭くて、面白かった。
  • 市田良彦の『ランシエール』を読み始める。