末期。

  • 14時から主治医による姑の病状の説明。義姉と、会社から早引けして柚子も来ている。
  • 昨夜は、果物ナイフで、じぶんの身体と外部を否応なく繋いでいる尿やら薬剤やらのチューブを切ろうとして、ちょっと立ち回りを演じたらしい。昼と夜が逆転しているのも含め、強い不安が姑を襲っているのだが、いわゆる「譫妄」であると云う。生の末期にある患者のほぼ八割が譫妄の状態に陥るそうで、昨夜の切断騒ぎも、まるで珍しいことではないそうだ。
  • さて、姑の状態は、いよいよ終わりに近いとのこと。数日で、呼吸困難に陥るようなことが起きる場合もあると云う。担当医と私たちで話し合って、近々予定している放射線治療が可能であれば、それを行ない、やはり先日のように無理であれば、いわゆる緩和ケアを、と、決める。
  • 姑は個室に移る。移ると覿面で、状態が悪くなる。先日、個室に移った姑の夜番をしたことのある柚子と私には判りきったことだったので、別段、驚きもなかったけれど。大部屋から個室に移ると、不安が増すのだろうが、他の患者もいるので、致し方ない。
  • 途中で義姉は帰る。姑が足のマッサージ機をどうしても持ってきてほしいと云うので、いちど帰宅して、持ち帰る。
  • その後も、起こしてくれ寝かせてくれ痒い痛いとずっとひっきりなしの姑に、すこし苛ッとしながら、ふと、柚子がこんなふうになってしまっても、いや、それ以前に、私には父と母がまだいて、さらにその前には祖母もいて、私はちゃんと面倒を見ることができるだろうか、と、自問する。何としても柚子だけは私がきちんと看取ると決めているが、父と母を、私はブチ切れたりしないで、それなりの死を迎えさせてやれるだろうか、と。
  • 姑がそれらの予行演習をさせてくれているのだと、私は今、少し思っている。