『世界・人類・平和』を観る。

  • 午後遅く、ようやく頭が廻り始める。風呂に入り、ついでに風呂掃除。
  • 夕方、DVDで頂戴していた、山下望の『世界・人類・平和』を観る。49分の映画だか、非常に周到に作り込まれていて、面白く観ることができた。
  • ドラえもん』に登場する、野比のび太が、綾取りと射撃に図抜けた才能を持っていることは周知の事実だが、しかしドラえもんは決して、のび太に本物の銃を与えることはない。云い換えればドラえもんとは、のび太に本物の銃を、人を殺すことのできる銃砲を所持したいという欲望を持たせないために、ありとあらゆる(ただし本物の銃以外の)おもちゃを与えている存在だと云うことができる。何なら、同級生の女の子の風呂を覗かせてやることだってする。
  • さて、これもまた周知の事実だが、のび太とは、戦後日本のメタファーである。日本の男の子は、決して本物の銃を持つことが許されない。受験戦争、対戦型ゲーム等々、日本の男の子は戦争が大好きだが、日本の男の子は、決して本物の戦争に遭遇することはできない。ドラえもんのポッケから出てくる本物の戦争以外の総てのもので、すっきりしてしまうのが、日本の男の子だからだ。「やっぱり、ドラえもんから自立するぞ」と、時折喚くことはあるが、しかしじきに涙と共に再会し、何事もなかったかのようにひとつ屋根の下で再び暮らし始めるのが、日本の男の子だからだ。
  • 監督の山下望は、批評も抜群に鋭い*1が、やはり映画を撮るべきひとだと確信した。歴史の取り込み方、ユーモアのセンス、荒唐無稽なパワー、どれを取っても巧い。複数の人間が登場する場面での格闘、銃撃のシーンをさらに練り込んだら、本当に素晴らしいアクション映画を撮ることになると思う。ところで、佐々木敦氏が謎の「教授」役で出演しているが、かなり渋めの名演技。一瞬、誰だか判らなかったくらい。「遠藤」を演じる俳優が、ちょっと岸田森に似ていて、しかも銃を構えるさまが実によくて、いきなり其処に映画が露呈するふうなぐらい巧みで、良かった。
  • 主人公の受験生が隣の友人宅を訪れる際、常に梯子を昇り降りする。この何度か繰り返されるショットが、いつも実に良かった。