『コロッサル・ユース』をみる

  • 皿洗いと洗濯と風呂を済ませて、『ウテナ』の続きをみて、昼過ぎから出掛け、「シネ・ヌーヴォ」に。九条の駅を降りて、商店街でMR君と、劇場の前でI嬢と待ち合わせ。
  • ペドロ・コスタの『コロッサル・ユース』*1をようやくみる。
  • 私としては『ヴァンダの部屋』より圧倒的に良かった。何より、分厚く濃密なサウンドトラックに痺れた。この映画にはショットはなく(一箇所、恐ろしく鮮やかなショットの切り替えがあり、まぎれもなくこれは映画なのだけれど)、むしろ音楽CDのそれのように、チャプターがある。つまり、映画でありながら、限りなくこの映画を、私は音楽として聴いた。ヴェントゥーラが語る美しいラヴレターの文面は繰り返し、それを覚え、書き取られることを求めて唱えられるのだけれど、いつも彼と他者の間に漂うばかりで岸を見つけられないのだが、不意に、予想もしなかった男から、その手紙が暗誦されるところでは、まるで素晴らしいオペラの二重唱を耳にしたようで、不覚にも涙が零れた。そう、私にとって『コロッサル・ユース』は、寧ろ、オペラである。
  • 蓮實重彦の惹句に導かれてのことだろうが、映画をみながら小津の映画を思いだした。云うまでもなくそれは、晩年のカラー映画のことである。あのカラー映画に於いて小津は、私たちの「現実」とは如何なる関係もない「映画」を生み出し得たのであり、『コロッサル・ユース』に、私は同じものを感じた。
  • しかし、オープニングとエンディングの完璧さと、ヴェントゥーラが身に纏っている黒のスーツと白いシャツの美しさときたら!
  • 本町の駅のプラットフォームで、『アラザル』を読んでくださっておられる方を、偶然に拝見し、本当に吃驚する。もしかすると、「シネ・ヌーヴォ」でお買い上げいただいたのかも知れぬ。雑誌の中ほどをご覧になっておられたのが些か残念であるが(拙稿はいちばん後ろなのです・笑)嬉しいかぎり。ありがたい!
  • ところで、佐々木敦氏の濃縮雑誌『エクス・ポ*2の増刊号「フルカワヒデオムゲンダイ!!!!!」に於いて、『アラザル』同人総動員で、古川日出男全作品レヴュウを書いております。主に首都圏での無料配布となるようですが*3、お読みいただけると幸い。私は『沈黙』の評を書きました。歴史と物語の語り(騙り)と音楽の力に就いて。
  • 梅田まで戻り、阪急東通商店街の古本屋を経巡り、「揚子江ラーメン」へ行き、駄弁る。MR君は嘗てリフティングが五〇〇回できたそうで、大変驚き、帰宅してからのち柚子にも話す。I嬢に、これからもずっと日記に「しま」の写真を載せるのか?と問われる。もしかしたら明日やめるかも知れないし、ずっと載せるかも知れず、よく判らない。
  • 私のアルバイトの時間があるので、申し訳ないながら慌ただしく梅田まで戻り、I嬢とMR君と別れる。