『アウトレイジ』をみる。

  • 面倒なことに、雨が降っている。
  • 九時、U君の目覚ましの音で起きて、ふたりで荷物の片づけを始める。壁一面に貼り付けられた『罪神』のためのメモを剥がしたり、レンジを磨いたりして、すっかりきれいにする。
  • 荷物を運搬してくれるはずのU君の兄から連絡なく、けっきょく、来られないということになったようで、U君はクルマを取りに、いちど家に戻る。私も一緒に出て、難波をぶらぶら。どしゃぶりの雨のなかを(靴の中まで濡れた)歩いて、古本屋の棚を眺め、ビックカメラマクドナルドで昼食をとる。
  • 再びU君の部屋に戻り、ひとまず荷物をクルマに積み込む。
  • それから、U君が下宿で使っていた自転車を売りにゆく途中、目と鼻の先に住んでいたくせに、その存在さえ知らなかったという松島新地を、ざばざばの雨のなか、ビニール傘をさして、通ってゆく。三時過ぎだったが、もう開けている店もあって、ピンク色の光のなかで、バニーの飾りを頭につけた女の子が、にっこりと微笑んで、うだつのあがらない男ふたりに、手を振ってくれるのがありがたい。
  • U君の運転で、どんどんクルマを走らせ、彼の実家に荷物を全部運び込んで、ふたりで三宮まで出る。ジュンク堂をぶらつき、U君と別れ、ひとりで北野武の新作『アウトレイジ』をみる。
  • 石井隆の『GONIN』をふと思い出したりするが、あれはひたすら雨の映画で、こちらは、晴れの映画。なぜなら、これは、ぴかぴかに磨きあげられて、ぬめぬめとしたツヤを放つ黒いクルマと、そのテール・ランプの赤のための映画であるから。そして、黒いクルマたちは、テール・ランプに鼻先をくっつけるようにして走り続ける。途中、そのぬめぬめの列からはみだしたり、列から突き飛ばされたりするクルマもあるが、そのとき、この映画に、笑いと暴力が同時に生まれる。それは云うまでもなくコメディの手法で、だから『アウトレイジ』は、可笑しい映画である。それから、『ソナチネ』に顕著だったように、北野武の映画はこれまで、女を巻き込むということを避けていた(忌んでいた)が、えらくあっさりと女を巻き込むようになったのは、やはりこの映画が『アキレスと亀』以降の映画であることを示している(とか何とか云っておく)。しかし、『アウトレイジ』を北野のフィルモグラフィで眺めるとき、いちばん近いのは『みんな〜やってるか!』なのではないかとぼんやりと思う。鈴木慶一の音楽、柳島克己の撮影もよかった。
  • 帰宅して、柚子と晩御飯を食べる。