「パウル・クレー展」をみる

  • パウル・クレー展」をみるために午後から出かけて、三時過ぎに京都近代美術館へ着く。閉館は五時なのに。公立の美術館は、せめて土日はもう少し遅くまでやってくれないだろうか……。
  • 会場のなかは最終日だから仕方がないのだがひとでいっぱいで、とても単純にキレそうになったので、空いている四階の常設展を先に眺める。此処の常設は好き。「呉州辰砂扁壺」や「流描き両手大鉢」などの河井寛次郎の戦時中の陶作、バーナード・リーチの陶版画「生命の樹」が、とても素晴らしかった。欲しいと思った。
  • 山口八九子の、白と赤の牡丹がそれぞれ描かれた一双の屏風「牡丹」は華やかだったが、村上華岳の掛軸「墨牡丹之図」は、真四角の画面を隙き間なく埋めるように牡丹の花ひとつが真上からにじり寄るように描かれており、鬱屈の如き気迫が強く滲み出ていて、実に面白かった(もう一点、異様のふうでよかったのが須田国太郎の昭和13年の「自画像」で、こちらはまるで亡霊のそれだった)。面白かったと云えば、円山公園の夜桜見物を描いている、明治30年作の印藤真楯「夜桜」*1
  • 常設をぜんぶみてから、再びパウル・クレーをみる。亡命後の最晩年の作品に、目が惹き寄せられることが多かった。私にとってパウル・クレーは重要な画家ではないということが遂にはっきり自覚できた。
  • クレーのではなく、けっきょく行かなかった(ことを今は大変後悔している)去年のウィリアム・ケントリッジ展の図録を買って、そのまま京都駅まで戻る。
  • 梅田で下車して古本屋を覗き、元町で柚子と待ち合わせて、シネ・リーブル神戸(15日は千円)で、ウェス・アンダーソンの『Fantastic Mr.Fox』をみる。脚本はノア・バームバックウェス・アンダーソンの共作(だからなのか、何処か『ライフ・アクアティック』ふうな仕上がりだった)。メリル・ストリープは最近ではいちばん素敵な仕事だったと思う。とてもチャーミングな声の芝居だった。臆面もなく人形たちの顔を真正面からアップで撮るのがよかった。
  • 帰宅して、柚子が焼きそばをつくってくれたのを食べる。食器を洗う。dmmo君が電話を呉れて、少し話をする。原稿をポチポチと。

*1:http://search.artmuseums.go.jp/gazou.php?id=156091&edaban=1 私がみた印象では、実際の画面は全体的にもっと暗く、空もずっと遅い時間の色をしている。