• やはり蒸し暑い。朝食の前とあと、窓を開けて網戸とレースのカーテンだけにして、その前の寝台の上で凝っと、本を読んでいる。吹いてくる風を受けている。「しま」と同じことをしている。
  • 昼食のあと、一階まで下りてリハビリを受ける。明日から午後一時半(と、いちど決まるが、他の患者との兼合いで、やはりこれまで通りリハビリの先生が迎えにきてくれることになる)。
  • 戻って、寝台の上で本を読みながら、うとうととしていると、間仕切りのカーテンの端から、ひょっくりserico嬢の顔が飛び出して驚く。柚子にゼリーの土産と、私には、えりすぐりの漫画を三冊持ってきてくれた。
  • 映画のこと(『ブラック・スワン』の主題はバレエではなくてサカモケとかフカヅメの痛さであり、ナタリー・ポートマン演じるヒロインの呆れるほどの鈍臭さであり、だからあれは云わば、『ドジ子のバレリーナ日記』なのである)や漫画のことや本の読み方とかあれこれ駄弁る。
  • 話し込んでいると、執刀医と看護婦さんたちがやってきて、手術跡に貼った巨大な絆創膏のようなパッドを剥がす。剥がしたあとのそれをちらりとみると、血を吸って真っ黒になっていて、ひいー!なんて云っていると、いちばん年かさの看護婦さんが、「黒くなった血ぐらいで、もぉほんと男は駄目ねー」と笑う。執刀医がイソジンを縫合した箇所に塗り、新しいパッドに貼り替える。
  • すっかり引き留めてしまい、病院を出て少し先までserico嬢を送る。
  • 夕方、介護保険を使うことになりケアマネージャと自宅で昼から会うため出かけていたスズキさん(仮名)が帰ってきて、マクドナルドのテリヤキバーガーとフライドポテトを差し入れてくれる。夕食後、ありがたくいただく。
  • 駅前にある本屋までパジャマと三角巾のまま歩いてゆき(暗くなってきたら自転車乗りは必ず点燈せよ!)、池波正太郎の『鬼平犯科帳』の文庫を二冊買って包装してもらう(頼んでから気づいたが研修中のバイト君だったのであんまりきれいじゃない。隣にいた店員さんがやってほしかった)。スズキさんが昨日「俺も本読みてえんだけど眼鏡がないからすぐ疲れちゃうんだよ。眼鏡つくんなきゃな、ミキで。読みたい本?そうだな、やっぱり池波正太郎とか西村京太郎とかだな」と云っていたので退院祝に。
  • 夜、柚子がきてくれる。入院してからずっと食べたいと云っていた福砂屋のカステラを差し入れてくれるが、これも激しく悩んだあと、スズキさんの退院祝にすることに。
  • 柚子を玄関まで見送る。
  • 消灯後も暫く本を読んでいる。