• 昼過ぎ『カーネーション』の再放送をみて、ずいぶん前に録画した『情熱大陸』の重松象平の回をみて、DVDでニコラス・レイの『夜の人々』をみる(ニコラス・レイの映画をできるだけまとめて順番にみて行こうと思っている)。
  • 長距離バスの停留所の前にある、ネオンサインの広告きらめくとてもチープな24時間営業の結婚式場で、逃亡中の若いふたりが夫婦になるその一連のシークェンスで泣きそうになる。その安っぽさと厳粛さの両立に(そして映画は此処から一気に最後まで加速する!)。最後に再びこの結婚式場が出てくるが、其処で展開される倫理性のようなもの(世俗の道徳とは無関係である。後ろに手が回りかねない金だから式場の男は金を受け取るのを拒否するのではない。これっぽっちも希望を与えられないから拒否するのである)がこの映画の持っているドライな(それはキューブリックふうの冷徹(ときどき冷笑的)な「観察」とは違う。ボウイとキーチーの若いカップルへ向けられた作り手の優しさは明らかであるが、だからと云ってべったりとした共感へは向かわない)美しさと響きあっている。黒人のボーイの目配せのあと、いきなり画面(鏡)の中に入ってきてボウイを威圧する伊達者のギャングのたたずまいの見せ方、ボウイが懐から拳銃を抜くのがとても下手であるさまなど、とても巧い。
  • 北川東子がなくなっていたのを知る。もちろんお会いしたことなどないが、彼女の薄くて小さな『ハイデガー』はとても素敵な本だ。ハイデガーの哲学の核心の、最も柔らかい部分に導いてくれる本だと思う。R.I.P.