• 行きは雨。電車を降りると止んでいる。私の前を制服姿の高校生の三人組――ひとりの髪の長くて背筋のぴんと伸びた女の子を挟んで、ふたりの男子――が歩いている。左の男の子が携帯プレイヤーから私の知らないロックを流していて、ところどころ一緒に歌ったりしながら、ふたりに聴かせている。とても、とても微妙なバランスで保たれているであろう三人の関係を、彼らの背中から読みとる。もちろん、私の勝手な思い込みなのだろうけれど、そうなのだと思い込みをさせる何かがある。いつか、この三人(から形成された若いひと)のことを恋愛(なのかどうかすら判らないけれど)小説に書いてみたいと思った。彼らの脇を通り過ぎるとき、彼らの顔(特に女の子の!)を決してみないように、俯いたまま、足早に前に出た。今、このとき、ベルトルッチの『ドリーマーズ』をみなおすと何を私は考えるだろうかと思う。
  • 古本屋の均一棚を覗いてから帰宅する。帰りもまた、雨。途中まで読んでずいぶん離れていたバディウの『哲学宣言』を読み終える。バディウの試みている哲学的な企てには共感を覚える。まだ咳が残っている。