ボレマンス、磯崎、和田永、一柳。

  • 朝、東京に着いて東京駅のスターバックスでココアを呑みながら梯明秀の『資本論への私の歩み』を読んでいる。
  • そこから品川へ出て原美術館で「ミヒャエル・ボレマンス:アドバンテージ」展をみる。
  • 品川から銀座のギャラリー小柳へ出て、「ミヒャエル・ボレマンス:Girl with Hand」展もみる。ボレマンスの絵画観が強烈に打ち出されている展示はむしろこちらのほうかもしれない。
  • 立ち食い蕎麦を啜ってから、N氏のスタジオで取材。
  • 午後六時で閉まる初台のICCへ慌てて行き、「磯崎新:都市ソラリス」展をみる。情報資本主義に地霊=歴史を巻き込みながら超高速回転させて、その遠心力で革命の兆しを次々とばら撒こうとするマオイスト、か。
  • 併設の「オープン・スペース2013」展は殆どみることができなかったが、和田永(不勉強ゆえ初めて知った)の《時折織成 ver.2 落下する記録》が兎に角すばらしくて嬉しくなる。テープが巻き戻り、高速でヨハン・シュトラウスのワルツが鳴り響く瞬間に立ち会えたのは僥倖だった。黒髪のラプンツェルのような磁気テープのひと筋がするすると落ちて、底のほうに緩やかに溜まってゆきながら、或る瞬間、蓄積された重みに、どさりと沈み込むさまも美しい。
  • 上野まで出て東京文化会館小ホールで「一柳慧 80th FESTA !」を聴く。第一部はROSCOの演奏する《シーンズI》での、特にヴァイオリンの甲斐史子の豪胆な繊細さ、《ピアノ音楽第八》での一柳慧の無表情のパフォーマンスが見事で、第二部は、初めに《雲の表情》を高橋悠治が弾いて(譜めくりがまだ舞台に出てくる前に、殆ど椅子に腰かけるのと同時にもう弾き始めてしまっていたのが、いかにも高橋悠治らしいと思った)と、トリで《ピアノ・メディア》を高橋アキが弾いた(指がよくみえる席に移って聴いてよかった)。高橋兄妹の、ちょっとしたしぐさの(たとえば、だらんと垂らした腕)、強烈な印象が残る類似など、いろいろと見どころの多い演奏会だった。
  • 演奏会にきていたKJと山本君に案内してもらいながら、アメ横近くの居酒屋で駄弁る。KJはマイケル・チミノの『天国の門』をふかくふかく絶賛し、山本君には「アンゲロプロスをレスペクトしているとか云いながらクーデルカ展に行かなかったなんて……」と詰られる。会計を済ませてから店を出ようとしたとき、二階にあがる階段の上に、大きな水槽みたいな空間が吊ってあるのに気づいた。そのなかに四本だったか、わざわざ斜めにした蛍光灯が瞬いているのをみて、KJが、「ダン・フレイヴィンだ!」と云ったせいで、駅まで三人、げらげら笑いながら帰る。
  • 東京駅まで山本君に見送って貰い、帰路。