• アレクセイ・ゲルマンの『神様はつらいよ』をみるために仕事も休んだので、昼過ぎから京都に向かうが、あんまり久しぶりだったので会場の京都シネマの入っているビルがどれだか判らなくなり、ぎりぎりで到着すると、満員で立ち見でも入場できませんと告げられる。京都で映画をみようとすると、どうもいつも何かうまくゆかない……。しかたがないので映画館を出て、交差点を渡っていると、i嬢とばったり。ちょっと立ち話をして別れたが、とても愉しい時間となる。
  • 京都芸術センターにふらっと寄って、たまたま今日から始まっていたふたりの作家の展示をみるが、若手のほうは生真面目だが息切れが激しく、どれも充分によく仕上げられているとは云い難く(物置に繋がっている扉の前に、逆さに貼りつけられた《こんにちは、クールベさん》からのクールベ抜きの引用は面白い)、年輩の作家のほうはひたすら呑気なだけで、ホワイトキューブのなかにものを置くだけでそれが作品になったり藝術になったりするわけでは決してないんだということへの畏れや問題意識がすっかり抜け落ちている。こんなものは藝術ではないぞ、俺には一切関係ないぞと表明するかのように、部屋の隅に腰かけて警備をしている初老の男性が、膝の上に開いたパソコン雑誌をひたすら熟読しているのには苦笑してしまったが、それだけが面白かった。
  • 京都駅まで、ぶらぶらと歩く。東本願寺のあたりを歩いていると、空気が線香の匂いに染まっている。前に数回行ったことのある西本願寺の前の古本屋で、軒先の百円箱からレーニンの『なにをなすべきか?』の文庫を買う。