• 池上英洋の『西洋美術史入門』を読み終える。とても基本的なことばかり書かれているが、もういちどまっさらな状態で学びなおすというのはとても愉しい。画布(カンヴァス)を支持体として用いるようになったのはヴェネツィアで、それは「港町であるため、あたりに船の帆に使う布があふれていたからこそです」とか、ヴェネツィアの景観画(ヴェドゥータ)があんなにたくさんあるのは写真がなかった時代、英国発祥のグランドツアーでやってきたぼんぼんたちの旅の記念品として飛ぶように売れたから、だとか、カラヴァッジョにみられるように「対抗宗教改革後のカトリック教会が、美術に"感情移入のしやすさ"を求めていた」とか、美術作品は「はっきりと言い表すことの難しい複雑な対象であるからこそ、より"科学的"な分析を加えるために、作品それ自体を"データの集合体"としてあつかい、文節化しデータ化する作業が有益となる……そのために不可欠なアプローチとなるのが、ディスクリプションで……これは「視覚情報を言語情報に変換すること」を意味します」だとか、読んでいると、とても嬉しくなってしまう。美学は、哲学の上位概念なのではないかと思ってしまうほどである。