• 久しぶりに大島渚の『忘れられた皇軍』を引っぱりだしてきてみたのだけれど、大島は本当に歌が好きだ。失われた「身体」を埋めようとするものとしての歌なのかもしれない。上半身だけがぶるぶると震え、下半身は踊らないミュージカル(坐した宴席での放吟と演説)映画を、大島渚はひたすら撮っていたのかもしれない。けっきょく一日家から出なかったのだから何か映画でもみようと思ってDVDを漁るが、10分ほどみては、なんだか違うなあ、こんなに懇切丁寧なカット割りでなくてもいいのに……と、くたびれて止めるのを繰り返して、けっきょくアンゲロプロスの『シテール島への船出』を見始める。いつの間にか陽は落ちて家のなかも真暗になって目玉だけになって、ぼーっとTVの画面をみつめている。途中で柚子が帰ってきたので、そこまで。続きはまた今度みよう。昔は頭まで巻き戻して(ヴィデオテープ!)みていたけれど、もう今はそこまではしないで、止めたところからみる。アンゲロプロスはそんなことを許さないと以前は思っていたけれど、アンゲロプロスをそんなふうにみてもいい。