• DVDでチャーリー・カウフマン&デューク・ジョンソン『アノマリサ』をみる。カウフマンの映画の主人公たちは、云わばずっと「嘔吐」し続けている。今回もひとりの中年男がいて、特別な女の声だけがそれを救ってくれるが、その効果も、たったひと晩だけである。きっと彼はこれまでずっとそうしてきたのだろうが、さらに特別な声を求め続けることで癒そうとし続けるかぎり、それは依存のようなもので際限はなく「嘔吐」が止むこともないだろう。しかし、「嘔吐」を止めるための方法はあるのであり、それは言葉と勇気というとてもつまらないものに拠っているのであるが、カウフマン&ジョンソンは、その別れ道を、二体のおじさんとおばさんの人形(人形しか出てこないのだが彼らは総て人間と見做されているこの映画のなかで、一体だけ、本物の人形が出てくる。それは骨董品でほとんど壊れてしまっており、ボタンを押すと「桃太郎」の歌を歌ったりする)を使って、冷徹に描き出す。
  • もうほとんど夕方になって出かける。新幹線で行こうかと思ったが節約のため電車を乗り継ぎ福山まで。駅前でラーメンを食べてから最終のバスで、終点の因島の土生港に行き、予約しておいた波止場の前のホテルで一泊。嘗て造船会社の寮か何かだったらしい建物で、ひとり暮らしの下宿のような部屋で、私にはとても落ち着く。クーラーでキンキンに部屋を冷やして、蒲団の上に寝転がり、オバマの広島来訪までの72時間のドキュメンタリとか、くだらないネタみせ番組をみながら笑いながら寝てしまう。