• プルーストを読みながら(『ソドムとゴモラ』で「わたし」がシャルル・スワンからゲルマント大公がドレーフュス派に改宗したことを打ち明けた話を訊くあたり)レベッカ・クリフォードも読んでいる。
  • ジョセフ・フォン・スタンバーグの『暗黒街』を見る。パンフォーカスの画面に慣れた眼には、ぼやけた背景を背に、美しい光を纏った人物の顔が手前でくっきりと浮かび上がるのが面白いが、J・C・チャンダーの『マージン・コール』もそういう人物ショットで構成していたのを思い出す。バック・マリガン(ジョイスみたいな名前)という花屋のギャング(『アルトゥロ・ウイ』はアメリカのギャング映画を大変参考にしたそうだが、ブレヒトはこのあたりからジヴォラの職業を思いついたのか?)を演じるフレッド・ケーラーも怒った犬のような綺麗な顔をしているが、ジョージ・バンクロフトの演じる仔猫と子供に優しい侠客ブル・ウィードが素晴らしい。横分けハンサムのクライヴ・ブルックはそういえば『上海特急』にも出ていた。パーティー会場の尋常でない紙テープの海や、ラストの銃撃戦の凄まじさに、煉瓦だろうが何だろうが、あらゆるものにカメラの前で芝居をさせるスタンバーグの過剰さ(小津はスタンバーグの影響大だろう)を見る。