• 仕事の帰りにシネ・リーブル神戸でケネス・ブラナーの『ベルファスト』を見る。窓枠に囲まれて配されるジュディ・デンチのばあちゃんの顔の素晴らしさ(最後のアップ、そして隠しつつ見せる縦のストライプのガラス窓)。この映画は、概ねバリケードで封鎖された路地で展開するが、ガラスに映り込んでいる中と外の空間を一緒に提示するショットがとても多い(或いは、室内で窓辺にいるばあちゃん、庭にいるじいちゃん、開けっ放しのトイレに坐っているぼくをひとつのフレームで捉えるショットの良さ)。隔たりを超えて、こちらにいるままであちらに一気に到達する見事なピッチャーとして父親(しかしギャンブルには弱い)や、映画館に坐ったまま『チキ・チキ・バン・バン』と共に空に向かって飛び出してゆくシークェンスは力強いが、それは「ここにいること」を解消するわけではない苦みを伴っている。
  • レミングの『チキ・チキ・バン・バン』を翻訳している渡辺茂男が、子供の頃とても好きだった絵本を書いていたわたなべしげおと同じであるであることを改めて認識する。レンスキーの『ちいさなじどうしゃ』とか『しょうぼうじどうしゃじぷた』とか『きいろいタクシー』とか『ぼくパトカーにのったんだ』とか、何度も読んだ。