- 洗濯物を干す。金を残しておいた方がいいだろうかと思うが、やはり四月の文楽のチケットは買う。年金の通知の葉書をようやく開けて見る。予定されているらしい年額を12で割ったら絶対に生きて行けるわけがないハシタガネで眼を瞠る。死ねってか。昼前から出かけて神戸映画資料館で筒井武文の『映像の発見=松本俊夫の時代』の「第Ⅰ部記録映画篇」と「第Ⅱ部拡張映画篇」を続けて見る。第一部は抜粋ながら『300トン・トレーラー』のかっこよさと、妥協なしに映画を撮っていたら本当に仕事が来なくなり、その間肉体労働や家庭教師のバイトなどで凌いでいたのを語りながら松本が「今から振り返れば笑い話にもできるけど、渦中の三年間は本当に苦しかった」と言うのと、ブニュエルに「会わなきゃよかった!」と爆笑する松本俊夫で終わるのがよかった。第二部では「『映像の発見』は当時の映画青年たちのバイブルで」とインタビュイが語るなか、私の斜め前に坐っていた白髪頭が、うんうんと頷いているのが視界の端で見えて、しんみりとした。一柳慧が出てくると、懐かしさがこみ上げた。『大島渚1960』のインタヴュ音声を聴くことができて(大島の声が楽しそう)、とても嬉しかったのと、草月ホールの「フィルム・アート・フェスティバル」を金坂健二が主導して粉砕したその顛末が、あまりにも今っぽくて(壊していいんだと犬笛で寄ってきた、まるで映画が好きじゃない奴らが寄って集ってぶっ潰してしまったので、真面目に受け取ってアンデパンダン式の上映会に変えても、結局「粉砕」した連中は誰も見に来ないんだと語る松本俊夫の顔を見る辛さ)、悲しくなった。
- 隣町で柚子に甘夏とオレンジのタルトを買って、食パンを買って、帰宅する。久しぶりに松本俊夫の『西陣』を見る。宮島義勇のカメラも三善晃のサウンドも日下武史のナレーションも最高にかっこいい。