- 電車が途中で止まる。空気の流れも感じず、まるで進まない鉄の箱の中に閉じ込められているのはとても堪える。本を読んでいてもいらいらしそうだったので眼を瞑って坐っていた。大声を出して喚きだしたりしなかった自分を褒めてやりたい。シネマ神戸には間に合って、オリヴェイラの『夜顔』と『絶望の日』を続けて見る。案の定疲れてうつらうつらしてしまったが、『夜顔』はミシェル・ピコリの男の粋がもうただの酢になってしまった厭な感じとかビュル・オジェの憤怒の風速の激しさだとか、ドヴォルザークの交響曲《八番》の使い方などが面白い。『絶望の日』はちくちくする内容であるが、古い邸を舞台に、もう過去になっているはずの人を甦らせて、今そこにいるものとして撮るのだから、それは当然ホラー映画のようになるのだが、カメラの場所や衣裳やメイクを変えることで、のうのうと映画が進んでゆくのがよかった。映画の暗闇というのは明るい。