• 武満徹の『音、沈黙と測りあえるほどに』は名著だが初出情報が載っていない。頼みの『武満徹電子音楽』は引越の段ボールの中に入れてしまった。閉館間際の図書館に行って『武満徹著作集』を見たら単行本と同じ。著作集の五巻に詳細な年譜がついているとあるので見てみると、作曲作品だけが載っていて、批評文の初出情報はゼロ。新潮社で出した既刊の本をただ集めただけで「著作集」かとがっくり。「武満徹映画エッセイ集」と副題のある『映像から音を削る』には「見ることについての対話的記述」が載っていない。夜中にいろいろ検索して、ようやく『季刊フィルム』の創刊号に載っているのを突き止める。
  • 昼前から阪神電車でのらのらと日本橋まで行き文楽劇場で「第28回文楽浄瑠璃の会」を見る。《艶容女舞衣》から「酒屋の段」で、子のない女と子を棄ててゆかねばならない女の対比を、豊竹若太夫の語りがこれでもかとねっちょりやる。ここまでやられると大変胸に迫る。《菅原伝授手習鑑》から「桜丸切腹の段」はもう何が何だかよく判らないのだが、竹本錣太夫の微に入り細を穿つ細密画のようなキャラクタの描き込みにやはり圧倒される。鶴澤藤蔵の三味線もかっこよかった。