舞台神聖祝典劇前夜祭

  • 首都高が混んで、東京駅着は八時。駅構内の片隅で、柚子が作ってくれたおにぎりを頬張り、朝食とする。その後、東京駅日本橋口店スターバックスで店員の女の子オススメの「キャラメル・モカ」を飲みながら明日に備えて『パルジファル』のリブレット(高木卓の名訳! 「共に悩みて悟りゆく/純粋無垢の愚か者/かかる男を待てよかし/われの選べる者なれば」だもんねぇ。素晴らしい)を再読し、バスの座席で強張った身体を緩める。やがて窓の外では、昨夜から今朝まで続いた雨が嘘のように止んで、快晴。十時ごろ店を出る。丸ノ内を歩いて、皇居前から地下鉄に乗って神保町に。久しぶりの神田なので、じっくり一軒一軒を眺めて廻る。至福のとき
  • 二時過ぎに「キッチン南海」に入る。福田和也などが折に触れて絶賛している洋食屋だ。店内は客で犇いている。基本的に食べ物屋で並ぶことはしないのだが、今日はどうしても此処で食べたいので並ぶ。5分も経たないうちに店のいちばん奥のカウンター席に案内され、ロースカツライス(700円)を注文した。キャベツの山はうずたかく、胡麻のドレッシングは美味。肝心のカツも評判にたがわず、衣は歯応えざっくり、肉も大変旨い! 小理屈を並べる必要のない、シンプルにおいしい店だった。混雑した店内を切盛りするお姐さんと、カウンターの中のコックさんたちの愛想が良いのにも感心。こういう店の従業員は愛想が悪いと云うのが関西の定番だからねぇ。
  • 四時、新宿駅の新南口前でMさんとその彼氏クンと待ち合わせ。彼氏クンとは初めて顔を合わせる。高島屋に入るが喫茶店が満席で、新宿をウロウロと歩き、結局ファーストキッチンへ。山梨県出身の彼氏クンは、この店を「ファッキン」と略すとか。それはマズイだろうと爆笑。Mさんと彼氏クンは職場で出逢ったそうで、馴れ初めなどを興味ぶかく聞く。
  • 六時、Mさんと彼氏クンに見送られて池袋へ。一週間ぶりにGちゃんと再会(苦笑)。駅の近くの居酒屋に入り、駄弁る。Gちゃんの現在進行中の仕事の話を聞く。大変面白い話だったのだが……此処には書けない。九時頃、Gちゃんと別れて、新宿に戻る。夜の新宿歌舞伎町の喧騒をぶらぶらと散歩する。石井隆の『GONIN』に出てくるバッティング・センターがあり、ちょっと入ってみようかと思ったが止めにして、そのままずんずん歩いてゆくと気がつけば新大久保まで来ていた。ハングルで書かれた看板を掲げる飲食店やブティックが、両側に建ち並ぶ細い路地を抜ける。まるで姑の観ている韓国ドラマの中に迷い込んだかのような風景。朝鮮語を話しながら闊歩する女の子たちが、どの娘もやたらと可愛いかったのは夜だったからか、単なる僥倖か。路地の途中までで、新宿駅の方に引き返す。
  • 駅前の横断歩道で信号待ちをしていると、チラシを配っていたホストが、私の目の前にいた高校生の男の子に声を掛けた。同業への勧誘であった。相手を刺激しないように努めて低姿勢で「ゴメンなさい、ボクは進学しますから」と断った少年(志望校は慶應)だったが、それでもなお「大学入ってからバイトで、そういう慶應生は多いよ*1」と食い下がるホストに「じゃあ参考までに頂戴していきます」と云って、ホストの差し出すチラシを取ると、そそくさと立ち去った。いやぁ大変興味ぶかい光景に遭遇したものだ。私が見たところ、少年はなるほど上品な容姿だったが、いわゆるホスト顔ではなかったのだが、プロの目から見ると、ああいうのが良いのだろうか。
  • 十一時に、予約しておいた新宿三丁目の安宿に着く。三〇分でお風呂が終わりますよと云われたので、着替えてすぐに入浴。大風呂に独りで浸かる。畳三畳の部屋は妙に静か過ぎて、柚子に電話。少し喋る。その後、電燈を消す間もなく蒲団の上で就寝。

*1:私の意見ではないので為念。