日録

夜の天気予報でアナウンサーが言った、「広くおだやかに晴れたところ」という言葉が、とてもいいと思った。それは彼の読み方だったのか、語の並びが、私の記憶の中から何かが喚起された気持ちよさなのか。

昨日の夜中にクロエ・ジャオの『ザ・ライダー』を見る。小さな音、ノイズにずっと取り囲まれて生きている男の生。馬の呼気とか金具のかちゃかちゃいう音、テレビの音、夜の虫の鳴き声、iPhoneのスピーカーから漏れるかさかさしたサウンド。冒頭15分ほど見て…

夜によると、もう雨はだいたい止んでいるが、風が強くて冷たい。道に迫り出していた満開だった桜の花弁は昼間の雨ですっかり振り落とされて、黒い舗道の上や側溝の縁に分厚く積もっている。それは雨を含んでぶよぶよしているだろうと思うのだが、風に曝され…

『ラストタンゴ・イン・パリ』でベルトルッチやマーロン・ブランドは、マリア・シュナイダーに知らせずに、バターを用いた性交のシークェンスを撮り、彼女は深甚なダメージを負った。にもかかわらず、この映画の彼女は素晴らしい。芸術は残酷だ、という吐き…

「総ての黒人が暴動を良いと思っているわけではない」と書いているのをみて、当たり前だろうと思う。そんな当然のことを日々ずっと言われているようだから暴動は起きるんだろう。火事場泥棒なんか肌の色に関係なく牢屋にぶち込んだらいいと思う。しかし、そ…

ベルリナー・アンサンブルのアーカイヴ公開で、ハイナー・ミュラーが演出した《アルトゥロ・ウイ》を見ていると、私が子供のころ、こういうものが格好いいと思っていた演劇の匂いがぷんぷんする。すっかり演劇から遠く離れてしまったが、コロナ禍のせいであ…

安い古本をぼつぼつと買っている。ほぼ毎日郵便受けに封筒が届いている。持っていなかった梅本洋一の映画批評だとか十年ぐらい前のホンマタカシのムックとかサラ・コフマンとか。梅本洋一はシェローやムヌシュキンたちの演劇について書かれた『視線と劇場』…

朝起きると、鬱々苛々していたことはどうでもいい、というか、なるようになれば別にいいやと思えるくらいになっていたので、やはり眠って脳をすっきりさせることは大事だなと、柚子が心配していってくれることには従おうと思った。朝、ゴミを棄てに行って写…

仕事に行く。昼飯に食べた、前任者おすすめの弁当屋の唐揚弁当がとてもまずい。 最近、なぜか山下達郎の初期のアルバムをずっと聴いていた。『SPACY』とか『RIDE ON TIME』とか『For You』とか『GO AHEAD!』とか。神経を昂らせない、耳慣れしているものを聴…

十年以上積みっぱなしにしていた、第一次安倍内閣のルポルタージュ『官邸崩壊』を読んだ。著者の上杉隆の現在の凋落ぶりもそうとうひどいが、これは面白い本だった。 現在の安倍内閣は、官房副長官の事務方の人事で、第一次のときに官僚たちからそっぽを向か…

洗濯物を干してから仕事に。職場の近くのコンビニは、カウンターのへりに透明のビニールシートを垂らして、カネのやりとりはトレイで行うようになっていた。百均のレジ前の通路には、養生テープで印が貼ってあり、前の人と近づきすぎないようにしてある。地…

いつも昼飯を食いに通っている店はどちらも臨時休業している。しかたなくテイクアウトの弁当を買ってきて食べる。 珍しく帰宅ラッシュの時間にかち合う。ホームに滑り込んできた快速の中の混み具合を、開いたドア越しにみて、思わずたじろいでしまう。気にし…

すっきり晴れている。カメラを持ってきて、窓越しに写真を撮る。「しま」にカメラを向けると、たいてい顔を背ける。柚子のようにかわいらしく撮ることができない(岩合さん曰く「いい写真を撮ろうという邪念が、猫を警戒させているのだ」)。彼女の朝ごはん…

ずっと雨。じっとりとしんどい。傘を差してゴミを棄てに行くが、今日は収集車が早かったみたいで、ゴミ袋を家に持ち帰る。原稿を書くためにテキストを広げる。少しだけ本を読む。YouTubeで馴染みの音楽をぼーっと聴く。「しま」と少しだけ話す。もう夜になっ…

雨。昼の休憩はファミレスでとる。テーブルは間引いてある。向かい合って坐る爺さんと婆さんがグラッパの赤ワインを呑みながら素顔を曝して大声で喋っている。そのずっと奥の席には、やはりひとつのテーブルに若い男女が坐っている。彼らはマスクをして、何…

今朝はハンブルク州立歌劇場の《パルジファル》をぼーっと眺めている。このところあちこちの歌劇場が《パルジファル》をアップしていて、それをつまみ食いしている。コロナの時代の音楽としての《パルジファル》。ずっと治らない傷口から血を流し続けながら…

朝起きて洗濯機を回す。洗濯物を干しにベランダに出る。「しま」は私を先導して先に階段を登る。「しま」がコンクリの床の上で日向ぼっこをしている隣で、今村仁司の『アルチュセール』のイデオロギー論のところを読む。 昼前に、先日あちこち回ったが店舗に…

仕事をして帰る。山下達郎の『SPACY』を半分だけ聴く。 柚子が作ってくれた焼きそばを食べて、そのあと少し何か書いたり読んだりしようと思うが、風邪っぽいのではやく眠るという柚子と一緒に、開架のソファから「しま」も連れてきて、眠る。 画廊は閉まり、…

職場から、すっかり疲れて帰宅する。今朝は、ぱっちり目覚めて快調だったが、今日の仕事に対して、やはり眠った時間が短すぎたようなので、夕食のあと、さっさと蒲団に潜り込む。眠りもまた、コミュニストたちがいうように、量は質に転化するのだ。

朝起きて、今日は仕事が休みではないことに、なんとなく釈然としないまま、出社する。 仕事を終えてから駅前の古本屋の百円棚を覗いたら、まだ『鏡の国の戦争』も『高貴なる殺人』も並んでいたので、たぶん「しま」しか入れない部屋の隅のどこかにあるはずだ…

鍼に行き、サンパルの「コフタ」でカツカレーを食べてから、三宮で写真を少し撮る。桜ノ宮まで出て環状線を降り、ちょうど太陽が背になるので、京橋のほうへ向かって写真を撮りながら歩く。 京橋を越えて蒲生まで出て、少し陽も落ちてきたので、京橋に戻る。…

職場の近くの古本屋の百円棚でジョン・ル・カレの『死者からかかってきた電話』を買う。お菓子とコーラをドラッグストアで買って、家に戻る。 夕食をとってから、Zoomでアラザルの同人たちと駄弁る。夜中の3時までずーっと喋る。意識がなくなるまで喋る。い…

「他人同士がひとつの場所に集まるな」と呼号されている。相当の補償(カネ!)もないままに。 何の補償もなく自由権を削減されることへの抗議の表明もなく、命の危険を盾に取られて、これに諾々と従うなら、これからも繰り返されるだろう。 他人がひとつの…

駅前の花屋が、ラナンキュラスを十本纏め売りをしているのを買う。朝家を出るときからジャケットを一着買って帰ろうと思っていたので服屋にも寄るが、ちょうどいいサイズがない。閉店間際の本屋で慎改康之の『ミシェル・フーコー』を買う。花の茎を鈍い鋏で…

ロンドンの本屋から郵便が届いた。ルイス・ボルツのカタログ『Common Objects』は、ボルツの写真とアントニオーニやJLGやヒッチコックの映画との影響関係を探る展示だったらしく、ページのところどころに彼らの映画から抜き取られたワンシーンが透明なシート…

カメラが修理から戻ってくる。とても嬉しい。昨日まではiPhoneで撮った写真をアプリでいじってモノクロにして遊んでいたが、偽モノづくりも、もうやめだ。 今日は朝から夕方まで、インテックス大阪でSKEの握手会の予定だったが、肺炎騒ぎのせいで中止になっ…

朝、仕事に行く前にカメラを宅急便で修理に送り出す。7月に買ってからずっと鞄の中に入れて持ち歩いていたので、急に肩が軽くなって、とても悲しくなる。しかたがないので、またiphoneで撮る。いつもはやらないことをしようと、撮ったのをアプリでモノクロに…

「これは女が、大好きな男を撮ってる写真だ。見たら判る」と書いているのをツイッターでみかける。さすが不愉快の痰ツボことツイッター。写真にはそんなものは写らないだろう。見たって判らないだろう。ホンマタカシの「My Daughter」はどうなるんだ。写真は…

洗濯物を干す。書き物のメモを作る。 元町の古本屋に行き、全29巻版の『荷風全集』がまだ残っているのを確かめて取り置きする。荷風をまとめて読んでみようと思っている。 梅田のヨドバシまで出て、自室のPCでNetflixをみるためのヘッドフォンを探した。i-Ph…

朝は柚子と「しま」に挟まれて眼を覚ます。 洗濯物を干す。ベランダで写真を撮る。写真も今年はもっとバチャバチャ撮ろう。 今年は批評を去年よりも努めて書く。出版状況というのはなかなか複雑怪奇らしいが、単著を出せるように準備をしよう。 美術について…