紙魚の散歩。

  • 久しぶりに天神橋筋商店街をぶらり。古本屋が増えているのが嬉しくて仕方がない。
  • 夜遅く帰宅した柚子にカツ丼を作ってもらい、ふたりで並んで食べる。
  • イタリア軍の中尉として第一次大戦*1に従軍した際の回想録である、エミリオ・ルッスの『戦場の一年』をちんたら読んでいるが、いやはや何とも凄まじいエピソードが幾つも詰まっている。『キャッチ22』も裸足で逃げ出すようなナンセンスっぷりなのである。
  • 最前線の困難な状況を伝えるため、急遽、大隊司令部へ赴いた「わたし」は、司令部を預かる大隊長の少佐の前に立ち、戦況の報告を始めるのだが……。

少佐はそのあいだずっとピストルを握っていて、自分の関心をわたしに示すため、ピストルをわたしに向けた。わたしは弾丸が発射されることを恐れて、ピストルを手で押しやった。彼はそうして押されるままになっていたが、すぐにまた前と同じ方向にピストルを向けるのだった。わたしは再びピストルを握った彼の手をつかんで、それを取り上げた。彼はひとことも言わずに、取り上げられるままだった。わたしは弾倉から弾丸を取り出してピストルを少佐に返した。彼は取り上げられたときと同じ無頓着さでピストルを受け取った。そのとき彼は微笑んだが、それは彼の中の別の人間が微笑んでいるように思えた。その微笑みは、自分がふざけていたと思わせようとして浮かべたものだとわたしは解釈した。少佐はしゃべらなかったし、時間は経過するばかりだったので、わたしは副官を探そうとその場を離れた。
副官は戦死していた。(……)
得るところなく走り回ったあげく自分の大隊に戻ることにして、第一大隊司令部の横をまた通った。少佐は別れたときと同じ場所にじっと動かず、手にピストルを持って微笑み続けていた。

  • ちなみにエミリオ・ルッスはこの本を、「わたしは自分の目で見たもの、そしてわたしの心に強く残ったことしか書かなかった。わたしが依拠したのは空想力ではなくて記憶力である」と述べている。

*1:この本の最初の頁に戦域の地図が載っているが、あまりに簡略化し過ぎているので、もう少し詳しい地図が載っている以下のサイトを、イタリア戦線の経過を含め、参照すると良い。http://ww1.m78.com/honbun/italy%20entry.html