『またの日の知華』を観る。

  • 試写会で原一男監督の『またの日の知華*1を観る。『全身小説家』に挿入された劇映画部分の感触に似た、ベタベタにセンチメンタルな映画。体操選手として期待されていた少女が、挫折して体育教師になり、やがて夫も子どもも棄てて同僚の教師と出奔。水商売で日銭を稼ぐようになり、最後は店で知り合った男に刺殺されると云う『新潮45』あたりが好みそうな話。その女のそれぞれの時代を、四人の女優が演じる(しかし桃井かおりは何を演っても桃井かおりになる。これは褒め言葉ではない。三人目の知華を演じる故・金久美子がいちばん良かった)のだが、違和感はまるでなかった。最後のシーンの夏八木勲の、笑っているような泣いているような顔が印象的。雪印のネオン看板や、渡辺真起子が演じる知華が幼い息子と踊る処とか、吉本多香美が皿洗いをしながらいきなりデカい声で歌う処などは良い。しかし、一本の映画としては、これまで原一男が撮ってきたものに比べると、弱すぎる。