火サスでルンプロをアジる。

  • 姑の病院に寄ってから、実家に。チビ黒の双眸は黄色になり、ちゃんと仔猫らしくなっていて、びゅんびゅん走り回っており、おばさん黒はそれを高い処から、鬱陶しそうな表情で、凝っと眺めていた。
  • 十三の「第七藝術劇場」へ行き、井土紀州監督の『ラザロ』*1三部作を「朝日のあたる家」、「蒼ざめたる馬」、「複製の廃墟」の順番で観る。先日の細川博司監督の『ヤリタイキモチ』と同様、インディーズ映画である。
  • 井土監督の最初の長篇作で、個人的にものすごく好きな『百年の絶唱』のようなソリッドな映画(もう十年ぐらい前の作品である)を期待していたのだが、そう云うのではなくて、'70年代の日本でも数多く作られた、反体制的な傾向を持つ政治とセックスを主題としたエクスプロイテーション映画と、「死ね死ね団」の「M作戦」が合体して『火曜サスペンス劇場』をジャックしたような映画だった。
  • 今の本邦は無惨なことに、貧乏人が金持ちを、ではなくて、貧乏人が貧乏人を殺す世界に突入しているわけで、貧乏人は殺るならキチンと金持ちを殺らなきゃダメだ、とか、金持ちや警察は権力を持っているから奴らとはフェアな闘争なんてしてはいけない、とか、我らルンペン・プロレタリアートに向けて、目の前の現実に騙されるな、「敵」をしっかり見据えろと、強烈なアジテーションを吐きながら、「ラスコーリニコフは甘チャンやな」と斬って棄てるダークなヒロインであるマユミが、金持ちとか国家と闘争し続ける『マユミ』シリーズを、『女検事霞夕子』なんかと並んで「火サス」が放送してくれるなら、毎週でも観たいけれど、もうあの番組じたい放送されていないのだった……。
  • 私の座席の前で、とても既視感の強い、チャーミングな女の子がいて、何となくこれはきっとあの噂の彼女に違いないと思い、失礼ながら……とお声を掛けると、やはりそうで、しばらくお話をさせていただく。仔猫と映画と自転車と写真に就いて。ぐるりと巻いたマフラーと小さなお顔とのバランスが絶妙なのだった。
  • 梅田に出て、堂山町のツタヤに向かっているとM女史から連絡が。女史を待ち、ファーストキッチンで夕食。書類を頂戴して、少し映画の話などをしてから、慌てて終電で帰宅する。