• 昼前に起きて、柚子と雑煮を食べ、きのうのおせちの続きを食べる。美味。風呂に入って本を読む。それなりに晴れているので、洗濯機を廻す。プロ・アルテQのハイドンのディスクを、後ろから順番に聴いている。ベランダで洗濯物を干していると「しま」が窓のきわまでやってくるが、寒いからなのか、けっきょく出てこないで、戻ってゆく。夕方、実家に年始の挨拶に行く。祖母を両親が介護している姿をみながら、これは大変だ……と思う。彼らにはユーモアがあるが、じぶんにはこれが持てるだろうかと内心呻る。帰宅して、正月特番の『オカムラ調査隊』をみる。ワイプの須田亜香里がずっと可愛い。

  • NHKの朝の元旦特番で、振袖を着た須田亜香里夏木マリと並んでひな壇前列の真ん中に坐っている。風呂に入って本を読んでいる。
  • 数年前、『アラザル』の増刊号だかどこかに書いた雑文で、じぶんが写真を撮りはじめたのは、古本屋がどんどんなくなっていったこととサケカスになったことと通底している気がすると書いたけれど、それは、行為の突出ということかもしれないと思う。何かのために本を集めるというより、好きな本を集めたかったからだし、批評するときも、情況を変えるためとかいうより、批評したくなる何かとの遭遇などがあり、書きたくなって、結果として批評している。写真も何かのためではなく撮るために撮っているし、サケカスになったのも、推しと遭遇してしまったので推しているのだ。シャッターを押すのもアイドルを推すのもおなじなのかもしれない。
  • 昨日からAKBだの何だのずっとTVでみていたのだから最初に聴くCDなんて何でもいいじゃないかと思いながらも、けっきょくあれこれ迷って、やはりグールドの弾くハイドンの《42番》が頭に入ってるディスクを選ぶ。暖房で背中を温めながら、椅子に坐ったまま、ぼーっと《42番》を聴いて、もういちど《42番》の二楽章だけを聴いて、それから続けて、《48番》と《49番》も、ただ、ぼーっと聴く。
  • 出かけようと思うが寒くて動けず。チームSの《凍える前に》を繰り返し聴いている。佳曲。かなり安くなっているのをみつけて年末に注文した黒沢清の『ダゲレオタイプの女』(ものすごく好き。いずれ何か書きたい)のBDが届く。プロ・アルテQのハイドンのボックスを《73番》から聴き始める。三〇年代の演奏だが、モノラルの録音はきれいだし、何より音楽がよく弾んで楽しい。
  • 今年は真面目に写真と取り組もう(展示とか真剣に考えよう)。映画もまた数をみるようにしよう。批評も、もちろん継続して書いていこう。ドン・デリーロを再読しよう。糞みたいなことで神経をすり減らすのはやめよう(他人は他人でしかないし、顧慮はそれを、受容することを拒むものに対しては、こちらが疲弊するのみ。ただの無駄)。
  • 夜中にようやく外に出る。隣町の貸ヴィデオ屋へ、借りていたディスクを返却しにゆく。帰りに、スーパーで柚子に頼まれていた牛乳を買い、コンビニで振込を済ませる。
  • 元旦からまたテロ。二十歳そこそこの青年が原宿で、ほぼ同世代の青年たちを無差別にクルマで轢いたそうだ。責任能力うんぬんではなく、こういうかたちでの噴き出しが起る情況そのものが悲惨すぎる。

  • ラディアンの『オン・ダーク・サイレント・オフ』とか聴きながら蒲団で本を読んでいる。柚子にカレンダーを買うのを頼まれていたので三宮のセンター街のジュンク堂まで出る。ドン・デリーロの『オメガ・ポイント』の邦訳が遂に出ていて一緒に購入する(『早稲田文学』で連載されていた都甲幸治による『ホワイト・ノイズ』の新訳も水声社から出るらしく嬉しいが、とにかく早く出てほしいものだと思う。ピンチョンもいいがデリーロの邦訳全集がほしいし、絶版になっているものも復刊されないだろうか)。センタープラザを降りるとちょうど「グリル・ピラミッド」が目の前にあり、確かカタカミ君が面白いって云ってたなと思いだして、割引だったのでカツカレーを食べてみる。それから実家の近所の散髪屋に行き、髪を切る。実家に寄ると帰りが遅くなるので、そのまま戻る。駅前のコンビニで、取り寄せていたプロ・アルテ弦楽四重奏団ハイドンの選集と、リバイバル公演の《制服の芽》と《手つな》がまるごと入っている『Stand by you』のタイプAとBを引き取り、スーパーでお菓子とコーラを買って、帰宅する。スーパーのレジで、私の前に並んでいたおっさんは、カゴのなかに、小さな惣菜のパックをひとつかふたつと、どん兵衛の天ぷらそばを入れていて、「わかば」もひと箱買っていった。このおっさんにも、大晦日が訪れているのだと、ふと思う。
  • 帰ると「紅白歌合戦」でちょうど刀剣男子が出ていて槍のひともいて、星野源の《SUN》はやっぱりいい曲だなあと思ったりしながら、TVの前と部屋を往復する。今回はAKBはBNKと一緒に出ていて《恋チュン》をやり、須田亜香里はきれいな衣裳で、にこにこと踊っていて、そこそこ画面にも映る。それだけでとても幸せな気分になる。柚子がつくってくれた、鴨とネギの年越しそばを食べる。「紅白」が終わったら「CDTV」にチャンネルを替えて、柚子と「しま」にも新年の挨拶をする。もう眠くなってくるが『挑発する写真史』を読みながら、またAKBが出てくるのを待つ。久しぶりに《センチメンタルトレイン》で、だったら、もうちょっと二位様を映してくれと思わないでもないが、やっぱり須田さんの穏やかな笑顔が見事で、良い年明け。

  • それでも十時ぐらいには起きる。須田亜香里が出る年末のTVの録画予約をして、風呂に入る。金村修とタカザワケンジの『挑発する写真史』を、今度はきちんと頭から読んでいる。
  • 値段がずいぶん安くなっていたので古本屋に注文しておいた「マティスとボナール」展の図録(ふたりが交わした書簡が半分ほど抄訳されて入っている)と、ヤンポリスキーの『デーモンと迷宮』が届く。『デーモンと迷宮』をぱらぱらと眺めるが、思っていたよりずっと変な本で、嬉しくなる。散髪に行くつもりだったが、電話をするとどうやらきょうは客が多いようで、ニイチャン、不機嫌そうな声。明日も開けていて、例年、大晦日は客が少ないとのことなので、じゃあ明日にしますと伝える。柚子は歳末の買出しに走り回っている。アーノンクールの振るハイドン交響曲84番を、妙に耳が惹かれて聴いている。

  • ひたすら眠る。起きてから風呂に入る。風呂で、エヴァンズの『第三帝国の到来』を読んでいる。ドーリックSQのハイドン(75番~77番)のCDを、ちょっと大きめの音でかけながら、本を抱えて蒲団に入って、続きを読みながら、また眠る。
  • 起きたら出かけるつもりだったが、だらだらと過ごしているうちに、七時ぐらいかと思っていたら、もう夜の十時で、吃驚する。柚子がもやしのいっぱい入ったラーメンを作ってくれて、ふたりで食べる。今夜も寒い。だらだらと朝方まで起きていて、ようやく眠る。

  • 仕事納め。職場の呑み会に顔を出して、楽しく話して、終電ギリギリで帰宅する。寒い夜道を歩いて帰りながら、今年は糞どうでもいいことでじりじりとキツかったなと思ったせいか、いきなり空気が冷たくなったせいか、両眼から涙が滲んでくるような、こないような、揺れるコップのふちのようになる。「手遅れになる前に」というのは、よく云われるけれど、いろんなことを考えてしまうと、これがなかなか難しいんだろうなと思う。おっさんになったから、大抵のことは流せると思っていたけれど、どうもそうではないらしい。
  • ほかの本を読みながら、ちょっと気になって手にとった本多理恵子『料理が苦痛だ』という本を、ちょこちょこと読んでいる。「毎日・毎回向き合う「日常」」としての「料理を作るのがあなたならば、一番大切なのはあなたの気持ちにゆとりがあること。「料理を苦痛に感じる」のは後ろめたくもないし、珍しいことでもない」とか、「時間があってもできないものはできないし、仕事だと思ってもどうしてもできない時だってある」とか、「だから自分の不調は自分でキャッチして早めに対応をとるべし」というようなシンプルな言葉に、(だよねぇ……)って頷きながら(私はまったく料理をしないけれども)。
  • 「ああ疲れた疲れた」とか云いながら、居間で、彼女もきょうで仕事納めだった柚子と喋りつつ、やがてホットカーペットの上で、「しま」の隣で眠ってしまう。

  • 今日は絶対にじぶんが嫌だと思うことは、いちどもしないと決めてみる。朝はもう少し早く起き出すべきだったかも知れないが、そういう次第だから昼前くらいに名古屋に向けて出発する。午後遅くに着いて、鶴舞の古本屋を少し覗き、地下鉄で栄に。公演が当選っているときにこの駅に降りると、ほんとうにわくわくする。サンシャイン栄に続く、地下鉄八番出口の看板が変わっていてちょっと驚く。
  • SKEカフェが今年いっぱいでなくなるのと、今日はラキクラがあるらしいので、行ってみるがもう長蛇の列で、すぐに諦める。「しま」と柚子に約束した赤福を買いそびれていたことに気づき(今検索したら、少し歩くといちど行ってみたかった赤福茶屋が松坂屋に入っているのに)、近所で探すのも面倒なので、いちど名古屋駅まで出て買い求める。本山のギャラリーNに行きたかったのだが、もう時間がなく、また栄に戻る。ビンゴでいい順番になるには、少し早く来すぎたかなと思うが、まあいいやと思ってチケットを発券する。ずっと買う機会がなかった、アイラヴチームEのTシャツ(両袖が緑色になる、もうひとつ前のが欲しかったけれど)もようやく買えて嬉しい。通りを渡って、スカイルのブックオフに行く。二十年前の愛知県美のボナール展の図録と、買いそびれていたパオロ・ヴィルノの『マルチチュードの文法』が安かったので買い、ついでに、サイリウム用の電池も買う。ぶらぶらと錦のあたりを散歩しながら写真を撮る。ビルの陰で、持ってきた「ダースーワイカー」シャツを着て、サイリウムの電池を入れ替える。劇場に戻る。
  • やっぱりビンゴはよくなくて、立ち見にならなくてよかったなというぐらいの後ろの席だったのだが、公演が始まって、センターに須田亜香里が照明を浴びてキラキラしながら立っているだけで、もう楽しい。バクバクする。しかも、今日の須田さんはいつも以上に間違いなく気合が入っている。《ほっぺ、ツネル》の可愛さがヤバイ、《1994年の雷鳴》の超絶イケメンぶりがヤバイ、須田さんが舞台にいる間は、その一挙手一投足に、ずっと眼が吸い寄せられて離せない。今じぶんはものすごいものをみているぞという驚きと興奮。これがあるから、じぶんは須田さんを推しているんだと再認識する。
  • 碌を食む身なら、誰だってこれくらいの嫌なことにはぶつかることもあるんだろうが、今年は、くさくさすることもむかむかすることも少なくなくて腐っていたが、そういう澱のほとんどが、今夜の須田さんのパフォーマンスをみていて掃除できた気がする。少なくとも、須田さんのキラキラを思い出している間は、そんなどうでもいいことは頭のなかから、さっぱり消えてしまう。お見送りのとき、須田TOの浅井裕華さんから、「私も持ってます」と着ているTシャツのことを指摘される。
  • エスカまで戻ってマクドナルドで腹を膨らませてから、だらだらと帰路。公演の感想をツイートすると、須田さんから「いいね」を頂戴する。ほんとうに幸せな一日だったと思う。