- 十年ぐらい前の元旦、突然奥歯が痛くなり、泣きながら柚子にタクシーで救急に連れて行ってもらったことがある。そのあとから通った駅前の歯科医院(ネットで調べたら、昔は丁寧だったのに客が増えるようになってからは……と書き込みされていた)に朝起きてから久しぶりに電話をすると、昼前なら応急処置で診てくれるとのこと。仕事に行く前に寄る。歯科衛生士の女性がすごくしっかり処置してくれて安心する。そのあとの院長の仕事も相変わらず手早くて何の心配もなかった。しばらく、また通うことになる。
- せめて日記ぐらい書きたいと思うが、全然書けず、洗濯物も取り込めず。だらだらと眠る。
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- ずっと起きないで眠っていると、東京駅のバス停に着く。雨。駅の中の本屋でぶらぶらしているうちに、いい時間になったので、地下鉄で乃木坂まで移動して、国立新美術館で「ピエール・ボナール」展をみる。セザンヌもキュビスムもマティスも経験して、それでもじぶんの絵を描くということ。特に、裸婦と室内画が選んで飾られたふたつの展示室では、ひたすら感嘆する。やはりボナールは私にとって、特別な画家のひとりである。無理を云って、見にきてよかった。
- 六本木トンネルを潜って写真を撮りながらぶらぶら歩いてマクドナルドで、書評の原稿の手直しをしてメールで送る。
- そのあと東銀座まで出る。歌舞伎座とマガジンハウスの前に何台も消防車が停まっているのを横目に、法律事務所のなかのIG Photo Galleryで、金村修の「Suck Social Stomach」展をみる。
- わざわざ地下鉄で銀座まで乗る。ギャラリー小柳でミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダースの二人展をみる。マンダース、やはり良い。
- もう四時を過ぎていて、足がくたびれたので、東京駅まで戻る。途中、名古屋で降りて、SKEの「お渡し会」に参加してみようかと思うが、「お渡し会」がどういう仕組みかよく判っていないので諦めてそのまま帰宅する。
- FNS歌謡祭で、須田亜香里がメンバーに入っている選抜ユニットのライヴの生放送を、裏番組の『獣になれない私たち』を録画しているので、とても真剣に、画面を注視しながら見つめる。こういうところに須田が選ばれているのがとても嬉しい。
- それが終わると、疲れて、蒲団のなかに潜り込む。
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- 朝起きだして、昨日書いたものを読む。このままだと幾らでも細部が膨れて終わらなくなると判断して、書きたいことをふたつに絞る。それから冒頭を書き改めると、なんとか昨夜に書いた分が整理できて、昼過ぎには書き終える。
- 宝塚に行く。阪急に乗っていると、携帯がずっと圏外(ときどき繋がる)になる。こんな時期にぶっ壊れなくてもいいのになあと舌打ち。あとでソフトバンクのほうの問題と判る。柚子と大劇場の食堂でたこ焼きを食べるつもりだったのに食いそびれる。
- 雪組の《ファントム》をみる。花組での二度の再演版の、ちょうど中間ぐらいのテイスト。望海風斗も真彩希帆も歌が巧くて、とてもいい。しかし、クリスティーヌの登場して最初の花売りのナンバーから、もう涙が出てきて困る。エリックの従者たちのなかのひとりが、頭の後ろに黒いリボンをつけている、たぶん娘役さんのダンスがとても気持ちがよくて、出番があるたび、ずっとオペラで追いかけている。幕間でパンフを繰ったら、たぶん笙乃茅桜。すごくいい。
- 私はなぜかこのミュージカルの父と子の物語にとても弱くて、第二幕はもうほとんど嗚咽しっぱなしである。涙が止まらない。しかし泣きながら、これはどうやらじぶんは今ずいぶん弱っているらしいぞと思う。泣きに泣きまくることで、カタルシスを貪ろうとしているなと思う。こんなところで、やはり少し参っていることを実感する。お芝居が終わってからのエンディングのショウも色が鮮やかできらきらしていて、堪能する。
- 靴底に穴が開いたので、元町で柚子に靴を買ってもらう。そのあと「ムジカ」でお茶を呑んで帰宅する。少しだけ原稿を訂正して、メールで送る。朝方までラジオを聴いたり、届いた『キネマ旬報』を読んだりしている。生涯のベストテンにたぶん必ず入れるアンゲロプロスの大傑作『アレクサンダー大王』がじぶんのを含め三票。そのうちのひとりは佐藤忠男だった。佐藤忠男とおなじテーブルに坐る日がくるなんて。
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- 朝から夜まで仕事に出て、帰ってきてから部屋で、JLGの『全評論・全発言II』に載っている、ゾエトロープで撮るはずだった『ザ・ストーリー』の「抜粋されたシナリオ」を読みながら、これが撮られなかったことをとても残念だと思う。「母と娘が部屋のなかを行ったり来たりする。どっちも裸である。あるいはただTシャツを着ているだけである。二人は互いに髪を乾かしあう。ダイアナが鏡を見る。カメラは二人を背後からとらえる。ダイアナが言う。男どもにあまり尻をほられたくなければ〔してやられなくなければ〕、尻をしっかり閉じる〔こわがる〕すべを心得ておかねばならない、と。そういうことね、とベティー。そういうことなの、とダイアナ。二人は笑い興じる。」
- 柚子と晩御飯を食べて、原稿を書き続ける。そのうち、幾らでも書けそうになってきて、文字数がどんどん増えてきて、しかし終わりが見えなくなってきて、たいへん焦る。頭が回らなくなり、蒲団に逃げ込む。