- 本棚を片づけながら吉田真の『ワーグナー』、スラヴォイ・ジジェクのワーグナー論(『オペラは二度死ぬ』所収。かなり面白い)などの、『パルジファル』に就いて記されている箇所を斜め読みながら、ブーレーズの1970年バイロイトの録音を聴く。実に清冽なるパルジファル。その速さが気持ちいい。最近はこればかり聴いていて耳が馴染んでしまい、あんなに好きだったクナを聴くと重ったるいとすら感じる始末。ブーレーズがバイロイトに初登場した、GMから出ている1966年の録音も聴いてみたいなぁ。
- 以前立ち読みしたときの記憶だから確かではないが、ジジェクは『イデオロギーの崇高な対象』のなかでも『パルジファル』の分析をやっていた筈。今度ちゃんと読んでみよう。
- しかし、ワーグナーばかり(専ら『トリスタン』と『パルジファル』だが)聴いていると、他の音楽が総じて色褪せて聴こえる。寧ろ、聴くに耐えないと云ったほうが正確か。傲慢だけれど。
- ワーグナーはうねる。DNAのらせん構造のようにうねりながら、昇ってゆきつつ下っている。その表情は刻々とめまぐるしく変化する。
- 腐りかけの果物が最も旨いと云う。それならばワーグナーは、永遠に腐りかけ続けている果実だ。