散髪とニャンコ先生

  • 昼過ぎに柚子と出掛け、私はひとりで神戸から三宮へ掛けて、ぷらぷらと古本屋を回る。
  • それから電車に乗り、実家の近くの散髪屋へ。長くなっていた髪を、ばっさりとやる。
  • 夕食を実家で食べ、零時過ぎに帰宅する。
  • 弟から借りた安彦良和機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の第15巻を読み、緑川ゆきの『夏目友人帳』の既巻分も読み終える。この世のものではないものが見えてしまう夏目君が、彼の祖母が妖怪たちから奪った名前を封じ込めた帳面である「友人帳」を継承したことから起こるあれやこれやを描いた、連作短篇集。
  • 本当はどえらい妖怪だが、ずっと招き猫に封印されていた所為で、すっかり不気味なデブ猫の姿が板についている、夏目君の「相棒」ニャンコ先生の愛らしさと、夏目君が妖怪たちに名前を返してやる際の画面の美しさのふたつで、すっかりやられたわけである。
  • 夏目君は親がなく、親戚中を盥回しにされてきた。しかも、彼は妖怪変化が見えるわけで、見えない人びとにそれを主張しても信じてもらえず、幼い頃の彼は、嘘つきのレッテルを貼られて、すっかり人間不信に陥ってしまう。それはどうやら彼女の祖母も同様だったらしく、それゆえ彼女は、その強烈な霊力で、妖怪たちと出会っては、遊び半分に名前を奪っていたのだ。名前を奪われた妖怪は、奪ったものの家来となり、呼ばれればいつでも参上せねばならない。この世で孤独だった彼女の、だからそれは「友人」帳と記されているのである。
  • この漫画で夏目君が主に関わるのは、「大人」たちである。それは、彼を迎え入れてくれた父の友人の夫婦であり、やはり妖怪が見える俳優兼祓い屋の青年であり、人間よりもずっと長い時間を生きるらしい、分厚い記憶を抱えている妖怪たちである。
  • 青春劇を駆動させるのに、最も簡便で最も強力な男女の色恋沙汰を敢えて抜きにすることで、この漫画はさらに広いコミュニケーションの劇を描き出そうとしている。この試みは、とても面白い。