屑拾い。

  • 昼過ぎから出かけて、きのう買わなかったツァイ・ミンリャンの『西瓜』を、やっぱりそのまま残っていたので買ってからアルバイトに行き、終わってから心斎橋まで出て、難波まで歩きながら、古本屋をぶらり。箆棒に安かったので取り置きしてもらっておいた古書(下巻を定価で買ってもずいぶん安いカントと、読んだのだけれど持っていないのを本棚で確かめたブラジヤック)を引き取る。
  • 映画をみて帰るつもりだったが、洗い物が台所に溜まったままなのがチクチクと気になっていたので、さっさと帰宅し、皿や鍋を洗う。しかし、どうにも気がくさくさして、雲のなかに顔を突っ込んでいるような不機嫌に捕らわれたままだ。
  • やがて柚子が帰宅するが、やっぱり私は不機嫌なままで、彼女が二階に上がってからも、一階の居間の椅子で独り、足許で「しま」がぺたりと横臥して暖房に当たっている、そのおなかを眺めながら、近藤譲の『音楽の種子』を読み続ける。近藤譲の透徹した知性と、それが表現される文章の骨の美しさには、いつもほれぼれする。
  • しかし、私の気分はぐらぐらぐらぐらしていて、私は私と決して一緒に暮らしたくないと思うが、よく柚子は私なんかと生活を伴にしてくれているものだと、つくづく思い、へらへらと笑う。