• 夜中の二時過ぎ、アバドの振るロッシーニの《セヴィリアの理髪師》を聴いていると、外で鴉がぎゃあぎゃあ鳴きだす。当然、彼らをライバル視している「しま」もベランダに続く窓際まですぐやってきて、じっと外を伺っている。暫くすると、鴉の鳴き声はしなくなった。
  • 「くぅ、くぅ」と、小さな梟みたいな声の鼾をかきながら、「しま」が膝の上で眠っている。動けない。