• ローレンス・ライトの『倒壊する巨塔』を読了する。9.11はユダヤとブッシュの陰謀だとか真顔で云うひとがいるのにときどき驚くが、あれは結局、アラブ人如きに西欧の中心地を攻撃することができてたまるかという意識なのだろうし、抑圧と否認であるから、あれだけまるっと信じ込むことができるのだろう。しかし白人だろうがアラブ人だろうが日本人だろうが何人だろうが、ひとしなみに呑み込んでしまうのが近代化である。9.11の根底には近代化でアイデンティティを揺るがされた(初めてアイデンティティというものを強く意識させられた)人びとが、それに何とか対抗を試みるが、しかし近代化の加速は止まらず、それと共に抵抗も過激なものとなっていったという図式が見出される。私は、大東亜戦争は内政の行き詰まりを外政(外征)で打開しようとした些か無理筋の結果であると思っているが、この図式でみるなら、9.11を西欧の人びとがカミカゼ・アタックと呼んだのは理解できるように思う。